くらし 【特集】今を受け取り、未来へ―受け継ぐ想いが、あしたを動かす。(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道清水町
- 広報紙名 : 広報Shimizu 2025年11月号
このまちには、
時を重ねながら育まれてきた文化や産業があります。
それぞれの場所で受け継がれてきた想いがあり、
その一つ一つが、私たちの暮らしを支えています。
長く響く「第九」の歌声。
氷の上で挑み続ける若者たち。
牧場を見つめ、日々を重ねる兄弟。
そして、新しい風を起こす商店街の姿。
それぞれの歩みのなかに受け継がれてきた想いは、
新しい力となって、このまちで動き出しています。
受け継がれる想いのなかに、
このまちの未来をつくる力を一緒に感じてみませんか。
■第九文化を受け継ぐ
響き継ぐ歌声
―第九がこのまちに残したもの―
清水町のあちこちに、受け継がれてきた力があります。そのひとつが、人と人をつなぎ、心を寄せ合う文化として大切にされてきた「第九」です。
舞台で声を合わせる人も、客席で聴く人も、その音の輪のなかで、たくさんの想いを重ねてきました。そして、その輪の中心にいたのが―
清水町の第九文化を長らくけん引し、今年、名誉町民に顕彰された故 高橋亮仁さんです。
高橋さんは昭和34年に、せせらぎ合唱団を創設して以来、66年にわたり合唱団を主宰。昭和55年には、合唱経験の少なかった町民を集め、町文化センター落成を記念した演奏会で「ベートーヴェン交響曲第9番(第九)」の合唱を成功させました。これにより、全国のアマチュア合唱団に第九ブームを巻き起こしました。『第九のまちといえば、清水町』として全国に知られるようになったのです。
その後も、高橋さんは平成22年までの全7回、町内で開催された第九演奏会で、町民合唱団を指導し、音楽文化の発展に大きく貢献されました。その姿は多くの人に「歌うことの喜び」と「つながる力」を教えてくれました。
清水町では、今も第九演奏会が継続的に開催され、町内小・中学校と清水高校で第九合唱が受け継がれ、町内には毎日第九のメロディーが流れています。
高橋さんが築いたのは単なる『音楽活動』ではなく、まちに息づく『文化のつながり』そのものでした。
“歌声を通じて人々の輪をつくる”
―その想いが、いまも響いている。
高橋 亮仁
たかはし・りょうじ/昭和33年に清水高校へ音楽教師として赴任。翌年の「せせらぎ合唱団」創設以来、同合唱団を66年間主宰したほか、全日本合唱連盟理事・帯広合唱連盟理事を25年間務めるなど、音楽文化の発展に大きく貢献。今年5月に93歳で逝去され、9月に清水町名誉町民に顕彰。
■受け取った音の記憶を、次の世代へ。
十勝しみず第九合唱団長
梶 幸雄(かじ ゆきお)さん
今年、十勝しみず第九合唱団をまとめる団長の梶幸雄さんも、高橋さんに声をかけられて合唱を始めた一人です。
当時の練習を思い返すと「高橋さんは『ミの音はミの音で歌う。パートで決められた音が共鳴すれば、ちょうど良い響きになる。私がそこに導くから、上手く歌おうと作った合唱はするな』と言っていました」
高橋さんが団員に求めたのは特別な技巧ではなく、まっすぐに自分の声を出すことでした。
「当時も今も、団員たちは互いに声を聴き合い、響きをそろえることを大切にしています。みんな真剣だけれども、ギスギスしていない雰囲気。この雰囲気は、今の合唱団にも受け継がれていると思います」
高橋さんのもとで培われた「音を大切にする姿勢」と「真剣さ」が今も変わらず続いています。
また、梶さんは若い世代への思いとして「未知の世界かもしれないけれど、恐れずに一歩踏み出して第九合唱に触れてもらえたらと思います。練習を重ねるなかで、全体の音がひとつにまとまる瞬間があって『今、音がひとつになった』と感じるんです。その瞬間の喜びを感じてほしいですね」
今年12月の演奏会に向けては「町民のみなさんでつくる合唱団が、町民のみなさんへお届けする歌声です。歌う人も聴く人も感動を得られる。多くの方々に、第九を通して感動を分かち合ってほしいです」
第九の響きは、これまでも、そしてこれからも、まちの人たちの心に重なり合っていきます。
ひとりの情熱が
まちの文化をつくり、
その想いが受け継がれて、
新しい声を生み出していく。
「第九」の響きは、これからも
このまちの心に生き続けます。
■第10回十勝しみず第九演奏会
2025
12月21日(日)
※くわしくは、本紙17ページをご覧ください。
