- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道清水町
- 広報紙名 : 広報Shimizu 2025年11月号
■商いを受け継ぐ
地域とともに歩み、受け継ぐ価値
―このまちの商いのかたち―
◇株式会社辻󠄀屋精肉店
辻󠄀屋 裕康(つじや ひろやす)さん
昭和2年創業、清水町でおよそ百年続く精肉店を営む辻屋裕康さん。小さい頃から、親の働く姿を見て育ち「継がなきゃつぶれる。それはもったいないなと思ったんです」と話します。道内企業で働いた後、食肉専門学校で学び、家業を継ぎました。
「自分が美味しいと思うものを売る」。それが、辻屋さんが大切にしている商売の基本です。先代から受け継いだのは「正直に商売すること」。お客さんとは本音で話し、日々の会話を大事にしています。
時代とともに商売の形も変わっていきました。辻屋さんから始めたSNSでの発信は、新たなお客さんを生み「変えていかないと行き詰まる。変われる部分を日々探しています」
今、特に辻屋さんが気にかけていることは若い世代の挑戦です。「応援したいし頑張ってほしいです。商売を始めるのは簡単ではないけれど、ここでもともと商売をしてきた人たちは、人との関わりを大事にしてきました。そういう人たちを頼れたら心強いはず。話してみれば、きっと力になってくれると思います。もちろん僕も」と話します。
辻屋さんの言葉には、このまちの商いを見つめてきた人ならではの温かさがありました。その姿は、これから挑戦していく世代の、道しるべになっています。
◇西村金物店
生天目 一総(なまため かずさ)さん
長く続いた金物店が閉店を余儀なくされた─。
その知らせを聞き「困っているなら、できることがあるかもしれない」と、ひとりの若者が動きました。地域に必要とされてきたお店を、このまま終わらせたくない。そんな思いで再び開く決意をしたのが、現在の西村金物店店主、生天目一総さんです。
生天目さんは、音更町出身。地域の課題に目を向け行動で応えていく『地域プレーヤー』として、清水町とのつながりを持ったのがきっかけでした。
最初は不安も多く、在庫整理や運営方法に苦労の連続でした。それでも、まちの人たちからの「開いてくれるの?」「助かるわ」「ありがとう」という言葉が背中を押してくれました。
「清水町に来て感じたのは人のあたたかさです。商工会青年部のみなさんも気さくに迎えてくれました。『困ったときは言えよ』と声をかけてくれて。相談できる仲間ができました」
日々の仕事で大切にしているのは「感謝の気持ち。お客さんがいるから成り立っているので、要望には全力で応えたい。『困ったら生天目くんのところだよね』と言われる存在を目指しています」と話します。
清水町で挑戦したいと思う人たちへは「まずは一歩踏み出してみてほしいです。ここには、困ったら助けてくれる人がたくさんいます。僕もその一人になれたら、うれしいです」
このまちに縁もゆかりもない若者が、このまちの老舗を守る─その姿は、このまちで『継ぐ』ことの新しい形を表しています。
■経験と想いが、次の挑戦を照らす。
挑戦への一歩が、新しい風を起こす。
この特集で見つめてきたのは
清水町のなかで受け継がれ、今も息づいている
「人の想いと行動」です。
文化を守り、
氷上で挑み、
牧場を見つめ、
商いに向き合う―
それぞれの場所で、
誰かの想いが形となり、
まちに力を生み出しています。
受け継ぐということは
過去をなぞることではありません。
今を生きる私たちが、
新しい挑戦や工夫を重ね、未来につなげていくこと。
その歩みが
このまちの今日をつくり、
未来を動かす原動力になっています。
誰かの挑戦を応援すること。
地域の出来事に目を向けること。
日々の小さな一歩が、
まちのあしたをつくっていく。
今日もまた、
新しい挑戦が、
清水町のどこかで始まっています。
今を受け取り、未来へ―
あしたを動かす力は、あなたのなかにあります。
