- 発行日 :
- 自治体名 : 北海道白糠町
- 広報紙名 : 広報しらぬか 令和7年10月号
■時代や国境を超えて人々の心に届ける感動のパフォーマンス
白糠町は、白糠アイヌ協会および白糠アイヌ文化保存会(磯部惠津子会長)による「アイヌ文化海外研修交流事業」として、異文化交流とアイヌ文化の世界発信を目的に「第50回ジャパンウィーク」に参加しました。
「ジャパンウィーク」とは、日本の生活文化、伝統芸能等を通じて日本を海外に紹介する国際交流イベントで、1986年以来毎年開催されています。(※年に2回開催されていた年もあります)
今年のイベントは9月3日から9日までの7日間、英国・マンチェスター市で開催され、日本各地の市民団体約500人が訪問し、伝統芸能や伝統文化などを披露しました。
白糠町からは、棚野孝夫町長をはじめ、白糠アイヌ協会および白糠アイヌ文化保存会の会員10人と町職員の3人が訪問。5日と6日の両日にムックリの演奏とアイヌ古式舞踊を披露しました。
5日はオープニングフェスティバルとして、マンチェスター市内にある「ファースト・ストリートスクエア」が会場。屋外ステージでの披露で、ステージの対面には大きなスクリーンがあり、そこにもステージの様子が映し出されています。開催時刻の15時(※英国時間、以下同様)を迎えると、会場は多くの人で埋め尽くされ、椅子に座り切れずに階段や路肩に座っている人も多く見られました。白糠町は3番目に出演。はじめに磯部会長がアイヌ語で「イランカラプテ(こんにちは)」とあいさつ。「本日は古くから伝承されてきたアイヌの伝統楽器ムックリの演奏とフンぺリムセという古式舞踊を披露します」と紹介しました。
ムックリは口琴と呼ばれ、弁という細長い部分を口の中で振動させ、川のせせらぎや鳥のさえずり、風の音を模倣する楽器です。進藤真奈美さんと木村明日香さんの二人がステージでムックリの演奏を始めると、来場者はその音色に聴き入っていました。
続いて会員10人が「フンぺリムセ(クジラ踊り)」を披露。フンぺリムセが始まると来場者は前のめりになり、興味深くその踊りを見つめていました。
翌6日は、会場が前日の「ファースト・ストリート・スクエア」の隣にある「ホーム・マンチェスター」へと移り、屋内での舞台公演となりました。
この日は19時26分からの公演で、前日よりも持ち時間が7分多いことから、アイヌ古式舞踊「クリムセ(弓の舞)」を追加。クリムセは、山へ狩りに行き、美しい鳥を見つけるも矢を射るか迷っている様子を踊りにしています。ムックリの演奏が終わると、進藤愁弥さんと光弥さん兄弟、渕野諒さんの3人がクリムセを披露しました。最後はフンぺリムセで公演を終えると、前日と同様に割れんばかりの大きな拍手が寄せられました。室内での舞台公演では、照明や音響という効果もあり、一層来場者に感動を与えていました。
また、5日と6日の両日は、マンチェスター中央図書館で白糠町のPRブースを出展。6日の14時から16時までは同ブースにてアイヌ紋様刺しゅう講座を開催し、来場者との異文化交流を図りました。
今回の「アイヌ文化海外研修交流事業」は、費用の一部に国のアイヌ政策交付金を活用しており、白糠町のアイヌ文化は、日本から参加した市民や団体の方も含め、海外でも多くの人に感動を与え、興味をもってもらうことができました。本町では、これまでもユーチューブなどでアイヌ文化を世界へ配信していますが、今回の事業は、海外での反応を直に感じることができる新たな取り組みとなりました。また、参加した会員の皆さんもアイヌ文化の奥深さや魅力を再認識することができました。
磯部会長は「日本から遠い英国ですが、本当に来て良かったと思います。いろいろな人に声を掛けられ励まされ、私たちもたくさんの感動をいただきました。一生の思い出です」。棚野町長は「とても素晴らしい公演で感動しました。会員の皆さんには心から感謝申し上げます。アイヌの伝統文化は、海外でも多くの人の心に訴えかけるものでした。今後もアイヌの伝統文化を国内外で発信していきたい」と話していました。