健康 健康ひと口メモ

『アルコールと脳萎縮』

仙南病院 丹治 宏明

アルコール多飲が体に及ぼす影響は、肝障害をはじめ、いくつも指摘されています。アルコールによる神経障害もあり、手足の末梢神経および中枢神経(脳)への影響がそれぞれあります。
以前からアルコール多飲が認知症の危険性を高めることは指摘されてきました。たとえば脳梗塞などの脳血管障害のリスクを高めたり、ビタミンB1欠乏による栄養障害を生じたりすることで認知症に至ることもあります。
また、アルコール多飲で脳の萎縮が生じてくることも確認されています。CTやMRI検査で調べると、大脳の前方(前頭葉)で萎縮が目立ってくるようです。誰でも加齢により脳は徐々に萎縮してくるのですが、多量の飲酒を続けることにより進行が速くなると考えられています。飲酒量が増えるほど脳がより萎縮してくるのです。個人差はあるようですが、日本酒では1日2合以上だと危険因子になるというデータもあります。ただし、脳の萎縮にはある程度可逆性があり、しばらくの期間禁酒すれば回復することもあるようです。しかしながらアルコール多飲が継続し、そのまま萎縮が進めば認知症の危険性がさらに高まることにもなるでしょう。
一方で、実は少量の飲酒であればむしろ認知症の予防になるというデータもあります。適度の飲酒を心がけることが脳の萎縮さらには認知症の予防にも大切であると思われます。日々の生活において、お酒と良好に付き合っていくことで脳の老化を少しでも防止していきましょう。