- 発行日 :
- 自治体名 : 宮城県多賀城市
- 広報紙名 : 広報多賀城 令和7年5月号
■はじめに
今から20年前、子どもたちがタブレットで学び、動画配信がこれだけ社会に根付くことは想像できませんでした。社会の変化は加速度的に進み、子どもたちの生きる未来は、私たち大人が経験してきた社会からは予測がつかない未来です。
このような時代を生きる子どもたちに、どのような力を育てていけばよいのでしょう。
本市では、令和3年度から「未来社会を創造できる力の育成」を教育改革の目標に掲げ、各学校での取り組みを進めてきました。
これまで、各学校では、先進地の視察を行いながら、「チーム担任制の実施」や「ほっとルームなどの教室以外の校内での居場所の設置」「STEAM-Labの設置」「生成AIの活用」などさまざまな改革に挑戦してきました。
今回は第二中学校の挑戦をお知らせします。
■第二中学校の挑戦
第二中学校では、「課題解決に必要な資質・能力を育む授業づくり~探究的な学びのプロセスを通して~」をテーマに、「教員の話を5分短く、生徒の活動を5分長く」の意識改革を手始めに、教師主導型の学習から、生徒が主体となって活動する授業への転換を図っています。
その特徴的な取り組みの1つが、「単元内自由進度学習」です。「個人で資料やインターネットを用いて調べ、解決を図る」あるいは「友達と協力して資料を調べ、お互いに意見を出し合いながら解決を図る」または「先生の助言を受けながら資料を調べて解決を図る」など、自分に合った方法、好きな方法を選択して学びを進めています。そして、最後にお互いの結果を共有しながら、教員と共に全体で振り返りとまとめを行うという授業スタイルです。
この授業では、生徒全員が意欲をもって、主体性を十分に発揮して取り組んでいる様子が見られました。特に、授業が楽しいという高い評価が得られ、生徒自身の自己評価の向上も確認されました。
▼学んだことを実際の生活に生かすための問題提起
単元の終わりには、探究課題を設定し、生徒の主体的な学びを後押ししています。その結果をパソコンを使って作成した文書や紙の資料などで表現することも特徴的な学習活動の1つです。例えば数学の1次関数の単元終了後に、以下のような問題に取り組んでいます。
▽「先生に車のセールスをしよう!」
・新しい車の購入を考えている先生がいますが、ガソリン車を買うか、ハイブリッド車を買うか迷っています。ガソリン車は安いのですが、ハイブリッド車は燃費がいいので、長距離を運転するにはハイブリッド車の方がいいように思えます。
・あなたはセールスマンで、ハイブリッド車を買ってもらいたいと思っており、ハイブリッド車の方がお得だとして売り込みたいと思っています。
・ガソリン車は200万円、ハイブリッド車は250万円で、燃費はガソリン車が1リットルあたり16キロメートル、ハイブリッド車は1リットルあたり32キロメートルです。
・ガソリンの値段は1リットル160円です。先生が1年間でどのくらい走行しているかを聞いて、先生にハイブリッド車を勧めることができるかどうか考えて発表しましょう。
このように、数学で学んだことを実際の生活の中で生かすことができると、単に問題を解くよりも達成感は格段に高くなります。もちろん1人だけでなくチームで挑戦することもできます。
□STEAM-Labで学びを支援
この取り組みには、令和6年にダイワボウ情報システム株式会社、テクノ・マインド株式会社、日興通信株式会社の支援によりハイスペックなパソコンと3Dプリンターなどが設置された「STEAM-Lab」が大きな役割を果たしました。
技術家庭科の授業では「部屋の整理に便利なものを作成する」という課題に取り組み、生徒が製図を基に3Dプリンターで作品を制作しています。また、総合的な学習の時間では、キャリア教育でお世話になった職場をモチーフにした物品をデザインし3Dプリンターで制作する活動も行われています。さらに、授業以外でも、始業時前や昼休み、(水)の放課後(部活のない日)にSTEAM-Labを開放し、探究活動を行いたい生徒が自由に自分の課題に取り組める環境を整えています。加えて生徒同士がオンライン上で使用できる情報共有の場を設け、学びを深める機会を提供しています。
この活動から、生徒自ら3Dプリンターのマニュアルを制作したり、多賀城創建1300年PRビデオの制作が行われました。
□生成AI(人工知能)を活用した最先端の授業
最後に紹介するのは、生成AIを活用した授業です。宮城県内ではまだほんの一部の学校でしか実施されていませんが、第二中学校では、昨年度に本市が作成したガイドラインを遵守し、事前授業を実施しました。この授業では「情報の正確性」や「情報流出」「知的財産権の侵害」「活用者としてのモラル」といった重要な注意点について学習した上で、道徳や英語などの授業で活用を開始しました。なお、活用に際しては、保護者の皆さんからの同意を得た上で実施しています。
■未来に向かって挑戦する生徒を応援します
第二中学校では、このような取り組みを進める中で、生徒の学習に向かう姿にも変化がみられています。生徒たちにとって、「知らない世界を探究すること」は、いつの時代でも、心躍るわくわくした体験であるに違いありません。また、第二中学校の生徒たちの明るいあいさつについて、外部の皆さんから「誰もが気持ちの良いあいさつをしてくれる」とおほめの言葉をいただく機会が増えました。これは、自分の力を肯定的にとらえることができる生徒が増えてきている証しではないかと考えています。これからも、生徒たちが未来に向かって挑戦し続ける姿を見守り、応援していきます。
問合せ:教育総務課教育総務係
【電話︎】368-5021