文化 【特集】山車の夏が来る(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 宮城県栗原市
- 広報紙名 : 広報くりはら 令和7年7月号
自然と体が動き出す、軽快な笛や太鼓、鉦の音。「やーれ、やれやれやれーっ」と掛け声を上げる人たち。そのにぎやかな祭りばやしと共に、豪華絢爛な山車が街を巡行します。
この催しは「くりこま山車まつり」。300年を越える歴史があり、栗駒地区岩ケ崎の夏に欠かせない、大切な祭りです。
今月は、その魅力や、携わる人たちの思いを紹介します。
■夏の風物詩 くりこま山車まつり
毎年7月に開催される、くりこま山車まつり。夜の街中を大型の山車が巡行する宵祭と、おはやしの一斉演奏を行う本祭をメインに、2日間にわたって街が熱気に包まれます。
この祭りの起源は、江戸時代までさかのぼります。栗駒地区岩ケ崎の鶴丸城主、中村日向成義は、かつて治めていた地で行っていた農民の慰安と五穀豊穣を祈願する祭りを、同地区でも催すことを領民に命じました。そして、その歴史は現在まで続いています。
祭り当初、山車は「飾り山」と呼ばれる固定展示のみでしたが、人々がみこしのように肩に担いで街を練り歩く「かつぎ山」へと姿を変え、その後、山車を取り付けた車輪付きの台座を、住民たちが引きながら町内を練り歩く現在の形式になりました。山車は、岩ケ崎周辺の9地区それぞれで制作され、近年は、歴史や物語の一幕を題材にした大型の作品が来場者を楽しませています。
また、祭りに欠かせないのが、子どもたちが主役のおはやしです。笛や太鼓、鉦を使って奏でる独特の拍子は、祭り当初から受け継がれています。
この他にも、文字甚句をはじめとする伝統芸能、栗駒みこしと文字みこしの2基による大乱舞などが、祭りに華を添えています。
■思い出は色あせることなく あの日あの時の山車まつり
歴史ある祭りを未来に残そうと、日々奮闘する、くりこま山車まつり実行委員会。
今年の実行委員長を務める狩野さんに、祭りにかける思いや、意気込みを伺いました。
2025くりこま山車まつり実行委員会
委員長 狩野 秀之 さん(栗駒上小路上)
◆最高のひと時のために
山車まつりは、地域の大きな軸であり、大切なつながりの場です。
子どもも大人も一緒になって、何かを成し遂げる機会は、年々貴重になっています。仕事や生活様式の多様化、少子高齢化、先のコロナ禍のような突発的な事象など、社会は目まぐるしく変化し続けています。それに伴って、山車の作り手や、おはやしを担う子どもの減少、山車の巡行ルートの制限など、祭りを運営していく上での課題がさまざま出てきています。
特に、祭りの目玉である山車の巡行は、コロナ禍を契機に規模が縮小されてから、今もそのままです。一度変わってしまったものを元通りにするのは簡単ではなく、まだもう少し時間がかかりそうです。
私たちは、そうした状況でも後ろ向きになるのではなく、祭りに関わる全員が一致団結して、最高のひと時を作り上げるために今、何ができるのかを考え、着実に行動しているところです。
その成果として、今年は、本祭でも山車巡行を実施することが決まりました。昨年まで、山車の巡行は宵祭のみで、本祭は山車を通りに置いて展示する「置き祭り」の形式を取っていました。
しかし、本祭でも山車と共に町を練り歩きたいという多くの声を受け、ついに実現しました。皆さんの後押しと、祭りへの思いをくんでくれた関係機関のおかげです。
こうした小さな変化をきっかけに、昼夜どちらも岩ケ崎の街中を山車が巡行できるようになることや、これから先も祭りを続けていけるような仕組みを作れたらと、思いを膨らませています。
◆出会いの力が生む熱気
祭りには、観客の存在が欠かせません。本番のために準備を重ねてきた人たちや、おはやしが最大限の力を発揮するためには、観客の笑顔と歓声が一番のエネルギーになります。こうした、多くの人たちによる出会いの力が、ほとばしる熱気を生み出しています。
今年も、それぞれの地区が情熱を注いで制作した見ごたえのある山車や、子どもたちによるおはやしなどを2日間にわたって披露します。来場する皆さん、ぜひ全力で祭りを楽しんでください。
最高のひと時を一緒に過ごせることを、心待ちにしています。