文化 市内の文化財散策

(239) 稲荷前遺跡
市内には、遺跡として存在が知られている場所が約550カ所あります。遺跡のほとんどは地中に埋もれているため、内容が明らかになっていないものや、いまだ発見されていないものもあります。今回は、開発工事によって新たに発見された稲荷前遺跡について紹介します。
稲荷前遺跡は、栗駒地区中野の岩ヶ崎高等学校から北西に約250メートル、標高約50メートルの丘陵に位置します。令和4年度に太陽光発電工事が計画された際、この場所は遺跡に該当していませんでしたが、開発予定面積が広いことから、現地の状況の確認を行いました。その結果、地表面で縄文時代の石器や古代の須恵器などが発見されたことから、遺跡の内容を調べるための発掘調査を実施しました。調査の結果、動物を捕るための縄文時代の落とし穴1基と、古代(奈良・平安時代)の竪穴建物跡3棟などが確認されました。落とし穴は、長さ約2.3メートル、幅約0.6メートルの長方形で、深さは約0.8メートルあります。竪穴建物跡は、3棟とも部分的な確認のみであるため、全体の大きさや付属施設など、詳細は不明ですが、平面の形は四角形であると推測され、いずれも同じ向きで建てられています。そのうちの1棟では、建物の北辺で煮炊きに使用したカマドが確認され、周囲の堆積土から、古代の土師器や須恵器が出土しました。
これらの結果から、稲荷前遺跡として、東西約110メートル、南北約80から130メートルの範囲が縄文時代の散布地、古代の集落跡に遺跡登録されました。

問合せ:教育部文化財保護課
【電話】42-3515