くらし 「蕪栗沼(かぶくりぬま)・周辺水田」ラムサール条約湿地登録20周年

未来へつなぐ大崎の「宝」

人間と自然が共生する社会を実現する上で、国際的に重要な湿地として位置付けられる「ラムサール条約湿地」。
「蕪栗沼・周辺水田」のラムサール条約湿地登録から、令和7年11月で20周年を迎えます。

■世界に認められた国際的な湿地
ラムサール条約は、昭和46年にラムサール(イラン)開催の国際会議で採択された、湿地に関する条約です。国際的に重要な湿地および生息・生育する動植物の保全と賢明な利用の促進のために各締約国がとるべき措置などについて規定しています。
「蕪栗沼・周辺水田」は環境保全や渡り鳥との共生の取り組みが認められ、平成17年11月ラムサール条約第9回締約国会議で、名称に「水田」が使われた世界で初めてのラムサール条約湿地に登録されました。

■豊かな湿地と農村の原風景が残る「蕪栗沼・周辺水田」
田尻地域に位置する「蕪栗沼・周辺水田」は、県北部を流れる北上川の支流、迫川の流域にある遊水地機能(※)を持つ堰(せき)止め湖の蕪栗沼と、沼と密接な関係にある周辺の水田地帯が豊かな湿地生態系を形成しています。
遊水地管理の一環として湿地を保全することで、多様な動植物の生息・生育場所やガン類の「ねぐら」の増加につながり、生物多様性が育まれています。
※遊水地機能とは、大雨などで川の水が増えた際、その水を一時的に貯め込み、川の水位を下げる機能です。

■水鳥の楽園
蕪栗沼の平均水深は約50センチメートルと浅く、周辺には餌場となる広大な水田が広がっており、水鳥にとって好適な越冬環境になっています。毎年、冬になるとマガンやオオヒシクイをはじめ、シジュウカラガン、ハクガンなど10万羽以上のガン類が渡来・越冬します。先人から今に続く農の営みが、渡り鳥に憩いの場を提供し、自然との共生を実現しています。

■ラムサール条約の3つの柱
ラムサール条約には、条約の目的である湿地の「保全」と、湿地の恵みを持続的に活用する「ワイズユース(賢明な利用)」、さらにこれらを促進する「交流・学習」の3つの柱となる考え方があります。この3つの柱を軸にした取り組みが、大崎の「宝」を守り、育み、そして次世代への継承につながります。

▽交流・学習
次世代育成として、市内の小・中学生を対象に、「蕪栗沼・周辺水田」を活用した環境学習を推進しています。
また、豊かな自然環境を生かし、冬季の渡り鳥観察だけではなく、里山の散策など四季を通じたツーリズムを展開しています。

▽ワイズユース(賢明な利用)
周辺水田では、「ふゆみずたんぼ」(冬の田んぼに水を張る無農薬農法)の取り組みが行われています。「ふゆみずたんぼ」はガン類の「ねぐら」となるだけではなく、作られた米は、渡り鳥との共生を目指す地域ブランドの象徴でもあります。

▽保全
枯れた植物が堆積すると水面が狭まり、「ねぐら」の面積が減少することで、ガン類の生活環境の悪化が懸念されます。ガン類の生活環境を守るため、ヨシの刈り取りや、地域の消防団と協力した野火(のび)により、陸地化を抑制しています。

■「蕪栗沼・周辺水田」を支える人
長年にわたり、「蕪栗沼・周辺水田」の環境保全活動などに取り組んでいる特定非営利活動法人「蕪栗ぬまっこくらぶ」副理事長の戸島潤(じゅん)氏に話を聞きました。
生物多様性の宝庫として世界に誇れる蕪栗沼は、今では地域にとってかけがえのない「宝」と認識されていますが、旧田尻町時代に県が計画した洪水抑制のための遊水地工事は、自然環境への配慮が不足したものでした。しかし、豊かな生態系を守るため地域住民と県が協議を重ねた結果、協議の中で自然環境に配慮した「蕪栗沼遊水地」の保全計画が策定され、保全意識が地域全体に広がりました。
私たち「蕪栗ぬまっこくらぶ」は平成12年に法人を設立して以来、動植物のモニタリング調査や小・中学校での環境教育などに取り組んでいます。ラムサール条約湿地登録から20周年を迎えた今、豊かな湿地環境を中心とする人間と生物の共生モデルとして、「蕪栗沼・周辺水田」の在り方を世界に発信していきたいです。

■「蕪栗沼・周辺水田」ラムサール条約湿地登録20周年祭~つなげ、100年先の未来まで~
「蕪栗沼・周辺水田」ラムサール条約湿地登録20周年の記念シンポジウムなどを開催します。この機会にラムサール条約湿地の役割について、改めて考えてみませんか。詳しくは、市ウェブサイトを確認してください。
日時:11月8日(土) 10時~
場所:大崎市田尻文化センター
内容:(1)基調講演、(2)高校生によるパネルディスカッション、(3)ガン類のねぐら入り観察会、(4)クイズコーナー、(5)手作りワークショップ
定員:(1)(2)300人程度(3)先着40人
申込:(1)~(3)10月1日(水)から31日(金)まで申込フォームで申し込み

問合せ:農政企画課世界農業遺産未来戦略室
【電話】23-2281