- 発行日 :
- 自治体名 : 福島県いわき市
- 広報紙名 : 広報いわき 令和7年3月号
■肺高血圧症
普通、高血圧というと、全身の動脈の圧力が異常に高くなる状態を指します。これに対して、心臓から肺に血液を送っている肺動脈の圧力が異常に高くなるのが肺高血圧症です。心臓や肺に過剰な負荷がかかり、進行すると心不全から死に至る場合もあります。
肺高血圧症はその原因から5つに分類されます。(1)膠原(こうげん)病、遺伝、薬の副作用などが要因となる肺動脈性肺高血圧症(2)心臓の機能不全や心臓弁膜症などの心疾患が原因となるもの(3)慢性閉塞性肺疾患や間質性肺炎などの肺疾患、低酸素血症に伴うもの(4)肺動脈が血栓で詰まることで発症する慢性血栓塞栓性肺高血圧症(5)その他、腫瘍、代謝性疾患、血液疾患などによるものもありますが、原因不明のこともあります。
症状は息切れ、疲労感、胸痛、めまい、浮腫などですが、初期には無症状の場合もあります。診断は、詳しい問診と心雑音や浮腫などの身体所見のチェック、胸部レントゲン検査、心電図、呼吸機能検査、血液検査、心エコー検査や心臓カテーテル検査などを行い総合的に判断します。CTスキャンや肺換気血流シンチグラムも原因の特定に役立つことがあります。
治療は原因によって異なりますが、血管拡張薬、抗凝固薬などの薬物療法、酸素吸入、血栓除去術や肺移植などの手術治療があります。早期診断と適切な治療が重要です。
■けんこうQandA 放射線治療(12)
Q:緩和照射について教えて下さい
A:放射線治療は、がんを治すだけでなく、がんによる症状を軽くするために用いられ、これを「緩和照射」と言います。たとえば、がんが骨に転移して痛みがある場合、10回ほどの緩和照射を受けると、半数以上の人で痛みが軽くなります。また、放射線の量を増やして1回だけの治療でも同じ効果が期待できます。がんが背骨に転移すると歩けなくなることがありますが、早めに放射線治療を始めれば歩けるようになる場合もあります。その他、神経の圧迫や筋肉への転移による痛み、脳転移、がんによる消化管出血、気道や消化管の狭窄症状の改善にも効果があります。
高齢者や合併症のために手術や抗がん剤治療が難しい方でも、放射線治療なら可能なことが多いです。
がんによる症状でお困りの方がおられましたら、放射線治療医にご相談下さい。
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■乳腺外科(12)
ー乳がんと臨床試験ー
これまでの連載で、手術や薬物療法、放射線治療といった乳がん治療について説明してきました。これらの治療法はどのように確立されてきたのでしょうか。
治療法確立の鍵となるのが臨床試験です。臨床試験とは、人を対象とした研究で、新しい治療法や薬が安全で効果的であるかを評価するために、患者さんの協力を得て行われます。臨床試験の結果、新しい治療法がより効果的であることが明らかになる場合もあれば、既存の治療法が引き続き優位性を示すこともあります。現在広く実施されている治療法(標準治療と呼ばれます)は、ボクシングのチャンピオンのように、数々の臨床試験という勝ち抜き戦を経て、その有効性が実証され続けているものです。
しかし、臨床試験には限界もあります。最も大きな課題は、結果が明らかになるまでに長期間を要することです。医学の進歩により多くの新薬が開発されていますが、臨床試験を従来通りに実施するだけでは、急速に変化する社会や患者のニーズに十分に応えられない可能性があります。
とはいえ、臨床試験は今後も乳がん治療の進歩において不可欠な役割を果たし続けるでしょう。
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(ホームページURL【HP】https://www.iwaki.or.jp)
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【電話】38-4201