- 発行日 :
- 自治体名 : 福島県伊達市
- 広報紙名 : だて市政だより 2025年9月号
◆映画「ぼくが生きてる、ふたつの世界」
この映画は、耳が聴こえない両親を持つ聴こえる子ども『コーダ』の心の葛藤と再生を描いた作品です。原作者である五十嵐大(いがらしだい)さんの実話を映画化したもので、日本映画批評家大賞で作品賞など4冠を受賞しています。 主演は、今映画やテレビに多数出演している人気俳優の吉沢亮(よしざわりょう)さん。今年4月に「福島県上映を広める会」が発足し、私もその呼びかけ人の一人になっており、伊達市では、県内で先駆けて上映会を開催します(詳細は12ページを参照)。 ところで、この映画の伊達市との関係ですが、電車内のシーンは実際に走っている阿武隈急行を使用しており、また撮影場所のひとつとして梁川駅が選ばれています。撮影場所について呉美保(おみぽ)監督は、「沿線の新緑が美しく、阿武急の駅を一つ一つ降りてみました。梁川駅に降りた瞬間ここだと確信しました」とおっしゃっていました。
さて、この作品の中では「ふつう」という言葉がよく出てきます。いつも何気なく使っている言葉ですが、改めて使い方の難しさを考えさせられます。 五十嵐少年にとって、これまで耳の聴こえない両親との生活が「ふつう」であったのに、あることを境に、「ふつうではない」と周りから見られていることに気付きます。 聴こえる人は聴こえない人を、自分とは違う世界にいると見てしまう。そうした考えが無意識のうちに差別を生んでしまうのだと思います。 この映画を見て、改めて、自分のものさしで物事を考えてはいけないと気付かされました。これまで私は、原作を読み、映画も見ました。その度に新たな思いが押し寄せる作品です。市民の皆さん、どうかこの映画をぜひご覧いただき、ふたつの大切な世界があることを感じ取っていただきたいと思います。
須田 博行