- 発行日 :
- 自治体名 : 茨城県利根町
- 広報紙名 : 広報とね 2025年9月号 No.738
利根町で野菜を育て販売している、若手農家の大野 慧さん。本業と農業を両立させながら、自然の中で暮らしをデザインしている。いつしか思いは形となり、「K3+」というブランドを立ち上げた。
今月のシリーズまち・ひと・しごとでは、利根町で野菜を育てながら「K3+」を運営している大野 慧さんをご紹介します。
■大野 慧(けい)さん
-profile-
大野慧さん(29)東京都で生まれ、小学生の時に父の実家がある利根町へ移住。趣味はサーフィンなど自然と遊ぶこと。学生時代はサッカー中心の生活をしており、大学卒業後は一般企業に勤め、その後海外へ語学留学。現在はベンチャー企業で勤務しつつ、自身が立ち上げたライフスタイルブランド「K3+(ケースリープラス)」を運営。
●“人と繋がる空間 愛を繋ぐ手段”
▽夢をあきらめた先で
幼少期の夢は、プロのサッカー選手になることで、同級生が公園で遊んでいる中、一人で一生懸命ボールを追いかけていました。学校の行事もサッカーの試合があれば欠席するくらい、本気でサッカー選手を目指していたんです。
高校時代に、鹿島アントラーズのトップチームの練習に参加させてもらう機会があったんですが、そこで自分の実力を実感し、このままサッカーを続けてもプロになるのは難しいと考え、夢を諦めました。
大学卒業後は、一般企業の営業職に就き、やりがいを感じながら働いていました。でも、もう少しアクセルを踏んでいきたいと思い、退職して、ヨーロッパのマルタ島へ語学留学に行きました。
その後、オーストラリアで2年間旅をして、「自分の暮らしを自分でデザインしたい」という気持ちが芽生えて、野菜作りをはじめました。
▽「+(プラス)」に込めた想い
最初は「K3+」というブランドにするつもりはなかったんです。使われていない土地をたまたま父が持っていたので、そこを畑にしようと決めました。当初は伸びきった草が一面に広がる荒地でしたが、声をかけてくれた20人以上の仲間の手を借り、約半年で畑にできました。
野菜を育てながら「これをしたい・あれをやりたい」と周りに話しているうちに、共感してくれる仲間が増え、できることも広がっていき、この繋がりを形にしたいと思い生まれたのが、ライフスタイルブランド「K3+」です。
「K3+」という名前ですが、手伝ってくれる人、育てた野菜を手に取ってくれた人、これから出会うであろう人の繋がりを「+」に込めています。
1年目は、友達や近所の方が手を貸してくれて、最近ではSNSなどで僕たちの思いや活動を知ってくれた方からも支援をいただいています。実は直売所も場所を借りています。木材や倉庫もいただき物なんです。
去年は、パタゴニアさんというブランドが行っていたユニフォームプログラムに採用され、僕たちの思いに共感していただいてユニフォームを提供していただきました。
そんな多くの人との繋がりで「K3+」は成り立っています。
▽たくさんのこだわり
僕らが使っている堆肥(たいひ)は、石岡市で養豚場をやっている友人から仕入れているもので、彼も環境や地域循環に思いを込めて取り組んでいます。彼の思いのこもった堆肥に、僕らなりに愛を注いで、それが形になった野菜を食べてくれた人達が〟愛を繋いでいく〝。そんな空間をデザインしたいと思っています。
野菜はキュウリやトマトなど、スーパーで売られているようなものをはじめ、西洋野菜やカラフルな野菜を育てています。自分では手に取らないような野菜を見てワクワクしたり、ちょっとうれしい気持ちになったり、そういうのも含めて全部楽しんでもらいたいので、少量多品種でいろいろな野菜を育てています。
現在、直売所をはじめ、さまざまな場所で販売していますが、町内の方に宅配ボックスをご注文いただいた場合は、僕が直接お届けします。トマトであれば、雨が続くとあまり甘くならないけど、カラッと晴れた日が続けばどんどん甘くなっていく。そういうことはスーパーなどの流通に乗せてしまうと伝わらない。僕らは人の思いや、お金よりも大切なものを直接伝えていきたいんです。
▽暮らしを生きる新たな挑戦
僕らが作った野菜をおいしいと言ってもらえたら嬉しいし、育てた野菜を使って仲間とバーベキューをするその瞬間が一番幸せで、まさに僕がデザインしている「暮らしを生きる」というところを感じられます。
農業というと、野菜を作って販売することだと思われがちですが、僕にとっては暮らしの一部であり、“人が繋がる瞬間、愛を繋ぐ手段”だと思っています。食や暮らしを通じて、楽しい空間を共有するために、これからもクオリティの高い野菜を届けたいと思っています。
他にも、古民家をリノベーションして「時間」や「余白」をテーマに、町を訪れた人がゆっくり自分と向き合えるような、リトリートの場を提供したいと考えています。その中で、自分で収穫した野菜を自分で調理して食べるとか、日常ではなかなか味わえない体験プランを作っていきたいです。
▽何もないから何でもできる
僕らが小学生の時は、自然と遊ぶことが当たり前でしたが、都内の子どもたちからすると、そういう環境は憧れであり、当たり前じゃないと気付きました。大人になってからは、、利根町って意外と悪くないな、と感じています。「何もないからこそ何でもできる」利根町には無限の可能性があります。
今は子どもが減っていき、にぎやかな光景が見られなくなっていることが寂しいですが、僕たち「K3+」がいることで「利根町に戻ってきたい」「利根町に住んでみたい」と思ってくれる人が増えたら嬉しいです。
これからもいろんな方と新しいチャレンジをしながら、町の未来をつくっていきたいです。
■宅配ボックス
定期便:2,500円~
・旬の野菜5~8種類(農薬・化学肥料不使用)
・毎週・隔週・毎月から選べます
・利根町配送無料
お問い合わせ先:K3+
住所:利根町大房596
【電話】070-8361-1931【メール】[email protected]