文化 飯能市の史跡・文化財を訪ねる(11)

■かんがい施設 宮沢ため池・ずい道
宮沢湖といえば、かつての動物園や中学校駅伝などを思い出す方も多いのではないでしょうか。
実は、宮沢湖の正式名称は宮沢ため池であり、飯能市を始めとした日高市、狭山市など近隣農業のために作られたかんがい(農業用水を取水・配水すること)施設ということをご存知でしょうか。
昭和以前の飯能市東部および周辺地域では台地が多く、雨水などから水をひき入れることが難しいため、農業や生活への被害が多発していました。
昭和5年、現在の飯能市や川越市を含めた当時の18市町村の連名による陳情を受けて、埼玉県はかんがい施設を宮沢に設立することを決定しました。それが現在の宮沢ため池です。
工事にあたり、課題となったのが取水方法です。安定した水量と勾配を確保するため、宮沢から直線距離で約5km西にある小瀬戸〜小岩井の千歳橋から上流500mに位置する入間川から取水することになりました。
そのため、現在の永田台などの台地や多峯主山などの地下を通る約4・8kmのずい道(トンネル)を人力で掘削しました。同じく長さ240m、高さ18・5m、底の幅が約100mにも及ぶ、ため池の水をせき止めるえん堤の工事では、馬の力も借りて工事を行いました。
こうして戦中の過酷な時期を経て、昭和16年に完成した宮沢ため池は、現在も使用しているかんがい施設として、周辺地域の農業の安定化に寄与しています。
第23回飯能新緑ツーデーマーチでは、宮沢ため池のえん堤をはじめ、ずい道の取入口付近にある弁天橋、ずい道の上にある多峯主山、奥武蔵自然歩道などを歩くことができます。宮沢ため池・ずい道の歴史や現在も使用している施設であることに思いを馳せながら、飯能新緑ツーデーマーチに参加してみてはいかがでしょうか。

問い合わせ:市立博物館
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