くらし SOSに気づくまち SOSを出せるまち(1)

■認知症が当たり前の時代 自分らしく暮らせる地域とは
厚生労働省によると、日本における認知症高齢者の数は高齢者人口のピークを迎える2040年に約584万人と推定されています。これは、65歳以上の約6.7人に1人が認知症になる割合です。自分自身や家族、大切な人が認知症と診断されることは決して珍しいことではありません。
昨年、「共生社会の実現を推進するための認知症基本法(以下、認知症基本法)」という法律が施行されました。認知症基本法は、認知症の人が尊厳を保ち、希望を持って暮らすことができるよう、互いを尊重し、地域で支え合いながら共に生きる「共生社会」を実現することを目的として定められました。そして、その共生社会を実現するため国が定めた「認知症施策推進基本計画」では、国民一人ひとりが「新しい認知症観」に立ち、認知症に関する正しい知識と理解を深めることが目標とされました。
認知症が当たり前の時代に「共生社会」を実現し、本庄市を『誰もが自分らしく暮らせる地域』にするため、私たちができることはなんでしょうか。

■新しい認知症観とは?
「新しい認知症観」は認知症になっても自分らしく暮らし続けることができるという考え方です。

▽いままでの認知症観
本人:何もできなくなる自分の思いを伝えることができない
家族:すべてをやってあげなければいけない
地域:地域では暮らせない・恥ずかしい・隠したい支えなくてはいけない
市民:自分には関係がないこと認知症になったらおしまい

▽新しい認知症観
本人:分かることや、できることが多くある自分の思いを伝えることができる
家族:周囲の支援やサポートを活用してもよい
地域:地域の支え手のひとりでもある地域の一員として暮らし続けることができる
市民:自分事として向き合い、備える

■共生社会の実現に必要な『新しい認知症観』について専門家にインタビュー
▽誰もが安心する未来へ~新しい認知症観と社会の課題~
認知症介護指導者 小林良氏
共生社会を実現するために、国民全体で認知症について考える『認知症基本法』が昨年成立しました。また、法律の成立に先立ち『新しい認知症観』という言葉が生まれました。
「新しい」と強調されるように、世間ではまだまだ認知症に対する誤解や偏見が根強く残っていると見受けられます。多くの方が知るように、認知症になると記憶力などが低下することは事実です。しかし『認知症になると何もわからなくなる』といったイメージは誤ったものです。実際には、認知症になったとしても、周囲の理解や小さな支えがあれば自分らしく生活することが可能です。
私自身、認知症介護指導者として認知症の方と関わる中で、認知症の方が私たちと同じように周囲の人との新たな関係を築く姿や他者を思いやる気持ち・感性を持ち続けている姿を見てきました。
認知症に対する偏見や無意識的な差別は、社会全体の課題です。誰もが認知症に関わる可能性がある中、国民全体で認知症を正しく理解し、『新しい認知症観』を持つことは大きな意義があります。
認知症であってもそうでなくても、誰もが幸せに歳を重ね、住み慣れた地域で安心して暮らせる社会のため、環境や心のバリアをなくし、今より少し周りの人のことを意識してみませんか。市と市民の皆さんで協力し、誰もが暮らしやすいまちを一緒に作っていきましょう。

■本庄市の取組
▽認知症サポーター養成講座
認知症を正しく理解し、認知症の方やその家族を温かく見守る応援者「認知症サポーター」を養成する講座を開催。こどもから大人、自治会や企業など多くの方が受講しています。

▽ステップアップ講座
認知症サポーターになった方を対象にさらに認知症について理解を深め、市とともに地域づくりを行うボランティアの養成講座を開催しています。

▽チームオレンジほんじょう
ステップアップ講座を受講したサポーターが「認知症になってもお互い様笑顔あふれる本庄市」をコンセプトに、地域で活動しています。

▽オレンジウィークinほんじょう
チームオレンジサポーターや本庄市の認知症施策に関わる方々が協働し、認知症について知り、理解を深めるためのイベントを開催しています。

『新しい認知症観』が当たり前になることが、認知症に対する偏見をなくし共生社会の一歩になります。本庄市は、誰もが安心して暮らせるよう、多くの方に認知症について正しい知識と理解を広める取組を行っていきます。

人々が新しい認知症観を持つことが『誰もが自分らしく暮らせる地域』につながる