くらし 市長コラム しんげの一言メッセージ

■言葉づかいの力
広報ほんじょう9月号に「認知症」について正しい理解を深める特集を掲載しました。社会の超高齢化が進む中、ご自身があるいはご家族が認知症のご家庭も増えています。家族で介護をされ大変ご苦労されている方もいらっしゃいます。また、自分や家族が認知症になったら、という不安をお持ちの方も多いと思います。
しかし、認知症を発症すると何もできなくなる、家族がすべて世話をしなければならないとかというと、そうではありません。認知症の症状が現れても分かること、できることは多くあります。家族だけで抱え込まず周囲の支えに頼って良いし、地域の一員として生きていくことができます。他人事ではなく、自分や家族もそうなり得ることを自分事として受け止めることが大切です。政府はこのような「新しい認知症観」を国民が共有し、その方にあった形で、適切な支援を社会全体で行っていきましょうということを呼びかけています。
昔に比べると、認知症に対する偏見は薄れてきたと感じます。背景には超高齢化の進行もありますが、私はそこに「言葉づかいの力」もあると思うのです。かつて認知症は「痴呆症(ちほうしょう)」と呼ばれていました。しかし、この言葉は差別的な響きを含み、本人や家族にとってつらいものでした。そこで、より尊厳ある表現を求める声があがり、平成16年に厚生労働省が正式に「認知症」という言葉を採用しました。行政や医療、マスメディアで使われるようになり、社会に定着しています。
「認知症」は、もの忘れや判断力の低下など、認知する力に変化が起きて生活に支障が出る状態を示す、中立的でわかりやすい表現です。もちろん、言葉を変えたからといって実際に経験している方のご苦労は大変なものがあると思いますし、不安や恐れから来る偏見や誤解は簡単にはなくならないかもしれません。しかしだからこそ、状況に正しく向き合うための「言葉づかいの力」によって、本人の尊厳を大切にしつつ、国民みんなで理解を深める取組を進めていくことが大切だと思うのです。
「認知症」という言葉が定着して20年、あらためて言葉づかいの力を大切にしたいと思います。

本庄市長 吉田信解