文化 みよし歴史探訪

■れきしとくらし 第四十回 宮前(みやまえ)遺跡
宮前(みやまえ)遺跡は北永井のこすず幼稚園の東側に位置する遺跡で、砂川の流れによって形成された斜面に位置しています。かつてこの斜面に横穴があいていて、中に観音様が祀られていたという伝承があったことから、以前は「穴観音(あなかんのん)」と呼ばれ、ここには古代の墓があるのではないかと考えられていました。伝承を裏付けるように昭和50年代に崖下の道路を拡張工事した際、崖を掘り込んだ横穴の開口部が見つかりました。しかしこのときには観音信仰の手がかりや、横穴の性格を明らかにすることはできませんでした。
その後、平成15年に発掘調査が行われた際に、大きな横穴が発見され、床面には炭や焼けて灰色になった土などが厚く積もっていました。また、壁の一か所に地上へつながる煙出し用の穴が掘られていることも合わせて、この横穴は墓ではなく、木炭を作るための炭焼き窯であるということが判明しました。炭を科学分析したところ、7世紀半ばから8世紀後半(奈良時代)に作られた遺跡であると考えられ、堆積状況から少なくとも2回は炭を焼いていたようです。
なぜ木炭を焼くためにこの宮前遺跡の場所が選ばれたのか、ということを考えるときにヒントになるのが、ふじみ野市の東台(ひがしだい)遺跡です。東台遺跡は、宮前遺跡と同じ砂川流域を下流に2キロメートルほど下ったところに位置する製鉄遺跡です。原料である砂鉄を熱して鉄を取り出す際に、燃料として大量の木炭を必要とするため、東台遺跡の周辺でも木炭窯跡が発見されています。いつか宮前遺跡の周辺にも鉄生産に関する遺跡が見つかるかもしれません。

問合せ:文化財保護課
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