- 発行日 :
- 自治体名 : 千葉県館山市
- 広報紙名 : 広報だん暖たてやま 令和七年4月号
■弟子入りから10年 師匠、やりましたよー!
南房総地域で新盆を飾る風物詩として目にする、手作り吊灯篭の「房州切子」。中村俊一さん(那古在住)が作るこの房州切子が、千葉県伝統的工芸品に指定されました。館山市の職人の指定は平成16年を最後に20年ぶりで、現在活動している唯一の方となります。
元々は農家の副業として作られていた房州切子。古くは分業制ができるほど生産者がいましたが、約45年前から中村さんの師匠である切子職人の故 行貝實(みのる)さんがひとりで伝統を守ってきました。
中村さんは、美術大を卒業後、都内で仕事をしていましたが、子育てをきっかけに地元へUターン。
実家の雑貨店で仏具を扱っていたことからなじみのあった房州切子の伝統の危機を知り、行貝さんに弟子入りを志願しましたが、当初は断られたそうです。それでも手伝いで通ううちに「本気でやるなら」と平成26年に弟子入りを認められました。
平成29年に初めて中村さん一人で全ての工程をこなし、200個の切子を作り上げました。行貝さんは弟子の初仕事を見届けて同年12月に亡くなりました。
今回の指定を受け、「故人のために贈る特別な工芸品である『切子』という文化をもっと知っていただきたい。文化と技術を次世代に伝えるためこれからも精進します」と語る中村さんのもとには、令和5年から県内の方が初めて弟子入りをしたそうです。
昨年、初仕事の2.5倍以上となる約530個を作り上げるほど成長した職人は、師匠の背中を追って今日も作業に邁進します。
■房州切子とは ひと夏だけの特別な贈り物
元々は切子灯篭と呼ばれ、南房総地域では新盆を迎える家の仏壇や墓参りで飾られる吊灯篭です。
現在は金色と白色の2色があり、持ちやすく盆棚にも飾れるよう他の地方のものと比べて丈が短く小ぶり(長さ約120cm)なのが特徴です。
お炊き上げ等最後は燃やすことから、ケント紙や障子紙、木枠にはスギを使って組み立てられます。
■千葉県伝統的工芸品とは
県では、伝統的工芸品産業を振興するため、昭和59年度から伝統的工芸品の指定を行っています。
「製造過程の主要な部分が手工業的であること」や「伝統的な技術または技法により製造されるもの」といった基準をもとに県知事が指定します。
県全体では、令和6年度末で205件が指定されていて、そのうち84件が現在も活動中です。
▽市内の県伝統的工芸品指定製作者(指定年度)
13名1団体
※詳細は本紙をご覧ください