くらし [特集]戦後80年 東金と「戦争」の記録
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- 発行日 :
- 自治体名 : 千葉県東金市
- 広報紙名 : 広報とうがね 2025年8月1日号 No.1372
終戦から80年。当時、東金も大きく太平洋戦争の影響を受けました。大戦末期、現在の東金市域を含む九十九里浜一帯は防衛の最前線とされました。昭和19(1944)年に整備された東金飛行場(豊成飛行場)には飛行戦隊が駐留。そして、砲台設置のための陣地や砲台観測所など、本土上陸作戦の警戒のためにさまざまな施設が築かれました。
こうした迎撃体制整備の動きは、連合軍の攻撃を招きました。東金市域では陸上における直接の交戦こそなかったものの、あと半年戦争が続いていたら、上陸作戦(コロネット作戦)により本土決戦がこの地で繰り広げられたかもしれません。
また、戦争では、多くの兵士たちが家族や恋人、友人たちを残し、祖国を護るため戦地に散り、多くの民間人も犠牲になりました
令和7(2025)年は、終戦を迎えた昭和20(1945)年から数え80年となる節目の年。戦争の体験や戦争遺跡を後世に伝え、平和の尊さについて改めて考える機会として、当時の様子と、今も残る戦争遺跡を写真などで伝えます。
■ABOUT PHOTO 東金飛行場(豊成飛行場)跡
太平洋戦争末期の昭和19年3月、陸軍の命令によって本土防衛の一環、九十九里迎撃作戦に備えて築かれた飛行場。面積約200ヘクタール、その大部分は豊かな畑でした。軍・官・民による昼夜を問わない工事により、同年12月には、滑走路未完成の状態で飛行第28戦隊が移駐。偵察機の百式司偵が武装し、戦闘隊として駐留しました。飛行場の設置により、米軍艦載機の攻撃を受けるようになり、軍関係の建物はもとより民家も焼かれ、民間人にも死傷者を出すに至りました。
終戦とともにその役目を終え、現在は、宅地や工場、農地などが広がります。この飛行場に勤務した兵士将校が、戦後住み着いて農業にいそしんだ土地として名づけられた「士農田」という地名と、格納庫の基礎部分(見開き写真)が、その跡をとどめています。
受け継がれた記録や言葉は、忘れてはいけない当時を物語ります。今年は市内の中学校で、表紙の写真のように、パネル展示などを通じて戦争について知り、現在そして未来に生かせるよう深く考える機会を設けました。ここでは、戦中や戦後の東金についてお伝えします。
◆PHOTO1 東金の戦没者と戦没地
確認されている限りで、大戦中、東金の方998名の尊い命が失われています。国内で亡くなった方の多くは戦傷が原因でした。ソビエト連邦で死亡した25名は、全て終戦後、シベリア抑留により亡くなっています。
◆PHOTO2 上田中(かみたなか)坑道陣地跡
田中にある法光寺の裏山は、山そのものが拠点速射砲陣地として掘削されました。この陣地は、九十九里に上陸した米軍が、千葉東金道路(現在の国道126号)を通って東京に進み大豆谷方面に現れた時、これを側射し、背射して、その進撃を阻止しようとしたものです。
もしも上陸に至っていた場合、沖縄や硫黄島のような戦闘が繰り広げられていたかもしれません。
◆PHOTO3 御殿山(ごてんやま)の砲台観測所跡
日吉神社の西側には、本土決戦時に九十九里浜に上陸してくる連合軍を砲撃する作戦が考えられ、30センチ榴弾砲陣地の砲座が作られました。そして、現在の東金高校の西側に位置する御殿山(東金城址)には、その攻撃の成果を見極め、敵軍の戦況を把握し、その情報を砲陣地へ報告する観測所が建設されました。建設途中で終戦を迎えたため観測所は未完成でしたが、観測所建設の名残は、写真のように今でも御殿山に残っています。
※現在、御殿山には立ち入れません。
◆PHOTO4、5 キャンプ片貝
現在、国民宿舎「サンライズ九十九里」がある一帯は、戦後間もない昭和23(1948)年に「米軍豊海高射砲演習場」(キャンプ片貝)が建設されていました。土・日曜日を除いて、正午から午後6時まで区域内で実弾射撃などを実施していました。その影響で住民への被害、漁業被害があったそうです。東金市街には、兵士たちが買い物や銭湯などに来ていました。
なお、唯一基地内で寝泊まりを許された日本人が東金出身の方でした。今回掲載した写真は、その方が撮影した貴重な記録です。
◆PICK UP 郷土研究愛好会企画展示 後世に遺し伝えたいことー80年前の東金ー
戦争による悲劇や戦時下の生活を忘れず、後世に遺し伝え、平和を大切に守っていけるよう、企画展示を行います。今回掲載しているものを含む多くの写真や図版、解説と共に、戦時の東金市域の様子を伝えます。
本土決戦に備えて築かれた陣地、東金飛行場の記録、東京からの疎開児童の話も交えた戦時下の生活、そして戦後に至るまでをご覧ください。
日時:令和8年10月31日(土)まで
場所:東金文化会館
問合せ:生涯学習課
【電話】50-1187
◆PICK UP 原爆の絵・ポスター展
平和推進事業の一環として、広島の原爆被害に関する絵・ポスターを展示します。
また、折り鶴を募集します。お預かりした折り鶴は、広島平和記念公園内にある「原爆の子の像」に捧げられます。なお、鶴を折る紙は、チラシや包装紙などでも構いません。
日時:8月15日(金)まで午前8時30分~午後5時15分(最終日は午後4時まで)
場所:市役所1階ロビー(エレベーター前)
問合せ:総務課
【電話】50-1117
◆BOOKS 東金と戦争に関連する図書資料
東金図書館の郷土資料室には、市の歴史に関する蔵書が多くあります。『語りつぐ昭和(東金戦争体験記)』『幻の本土決戦第2巻房総半島の防衛』『もしももう半年戦争が続いたら本土決戦下の東金』などの本は、当時の様子を知る手がかりになります。2冊以上あるものは貸出も可能です。
問合せ:東金図書館
【電話】50-1190
◆BOOKS 東金戦争体験記 語りつぐ昭和
「むかし、東金は戦場だった」。この本は平成7年「広報とうがね」で募集し寄稿いただいた戦争体験などの記録集(平成8年発行)です。当時を生きた人が何を考え、行動したのか、日中戦争から戦後の混乱期まで、55人の証言をありのままに伝えます。
価格:1冊1千円(在庫がなくなり次第販売終了)
問合せ:秘書広報課
【電話】50-1114
◆終わりに
日本の平和の礎には尊い犠牲があり、ここ東金も例外ではありません。
今を生きる多くの方は、戦争を体験していない世代です。しかし、この記録と記憶を風化させず、次の世代へ平和な世の中をつないでいくことが、現在生きている私たちに必要なことです
もし戦争があと半年続いていたら、どうなっていたでしょうか。あなたも、私も、生まれていなかったかもしれません。
この機会に「平和」について、共に考えてみませんか。
問合せ:生涯学習課
【電話】50-1187