文化 先人たちの足跡No.301

■栄町に伝わるヘビの昔話「眼助大師」(一)
今年は、干支にちなんで、蛇にまつわる栄町の昔話を取り上げています。今月号から連載するお話は、布鎌の昔話「眼助大師」です。(以下、高塚馨編「栄町の昔ばなし」(平成17年)記載の文章を元に、一部改変して掲載。)
七左衛門は、背がスラッと高くて美男子でした。近所の娘たちは七左衛門の姿を見ると、体がしびれ、胸は高嶋り頬を紅潮させました。奥さんたちも、自分の夫と比べながら深いため息をつくのでした。
さて、この七左衛門という男ですが、非常に芝居が好きで、寝ても起きても芝居のことばかり考えているのでした。田や畑で仕事をしながらでも、芝居の真似ばかりしていました。「ああ役者になりてえ。芝居をやりてえ。どうしたら役者になれっかなあ」とため息ばかりついていました。
そんな、ある日のことです。歌舞伎役者で大江戸の飾り海老と呼ばれ、江戸八百八町で人気絶頂の千両役者の七代目市川団十郎が、成田山新勝寺に来て三、七、二十一日の修業を行なっているということを聞いたのです。さあ、七左衛門は、もう居ても立ってもいられません。早速身仕度を整えると、家の人たちにも黙って家を飛びだし、成田山へと向かって歩きだしました。
新勝寺に着くと、団十郎は今、他の修業僧と共に護摩焚きの念仏修業が終わって、本堂から出てくる所でした。七左衛門は、急いで団十郎の近くへ行き、土下座をして大声で言いました。「団十郎さま、どうか私を弟子にして下さい。お願いします」と。しかし、団十郎は、ちょいと七左衛門を一瞥しただけで、行き過ぎてしまいました。二度目も三度目も同じことでした。それでも七左衛門は諦めませんでした。毎日毎日同じことを繰り返していました。

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