くらし 篠原先生の「幸福人生のレシピ」

「NPO法人自殺防止ネットワーク風」代表を務める篠原鋭一先生が、人生を楽しくするレシピをご紹介します。なお、本文中にあります絵本「いのちのまつり」は図書館蔵書となっています。ぜひご一読ください。

■“人間ウォッチングしてみましょう”
十数年前に少年少女向け絵本・草場一壽作『いのちのまつり』(サンマーク出版)がベストセラーになったことがあります。
内容は「私たちの生命はずーっとつながっている。自分の生命は、お父さん・お母さんからいただいた。お父さん・お母さんも、そのお父さん・お母さんからいただいた。そのまたお父さん・お母さんも……。例えば、両親、祖父母、祖々父母、祖々々父母まで数えると三十人になる。この生命がもしとぎれていたら、私の生命はないんだよ……」と、生命が脈々と続いていることを教え、「だから、この“尊いいのち”を大切にして生きていこうよ」と呼びかけ、最後に「自分の生命の源である多くの人々のことを“ご先祖”と呼んでいるのだ」とむすんでいます。
この絵本を読んだ子どもたち誰もが、びっくりして言いました。
「へー、オレって、」こんなに多くのいのちがあったかこそ、生まれることができたのか!すげえっ……」
「私の生命の源を見つめることができて、いのちの大切さを知りました……」
「ご先祖って、私のいのちを作ってくださった人たちのことなんだ!」

教えられていなかったのですね。このことが理解できてこそ“いのちの尊さ”がわかるのです。つぎのことを覚えておいてください。

(1)“いのち”は脈々と続いています。
十代前までのご先祖数 一〇二四人
二十代前までのご先祖数 一〇四万八五七六人
三十代前までのご先祖数 一〇億七三七四万一八二四人

(2)毎日三度の食事をいただくと。
二十歳の人は 二万一九〇〇回
四十歳の人は 四万三八〇〇回
六十歳の人は 六万五七〇〇回
実はこの食事、すべて人間以外の生物の生命をいただいているのです。

(3)八〇歳まで生きたとしても。
眠ってる時間_二十七年
食事をしてる時間_十年
トイレの時間_五年
目覚めて何かできる時間_三十八年
眠ること、食べること、トイレに行くことは、体の健康を保つために、とても大切なことですが、それ以外の何かをしている時間ってこんなに短いのです。

(4)八十歳まで生きて“この人に会えてよかった”と思える人の数。
─わずか二百人─
この地球上には約六十億人の人間がいます。そのうち日本人は約一億三千万人。これだけ多くの人がいるのに“私は、私の人生の中で、この人に会えて良かった”と思うことのできる人はわずか二百人だそうです。例えば両親・兄弟・先生・友人・職場の仲間など……。“ああ、この人に会えて幸せだなあ”と思える人って実は少ないんですね。だから一人一人との出会いが大切になるのです。お互いが“あなたに会えてよかった〃といえる二百人の一人”になりたいものです。ご家族で“人間ウォッチング”をしてみてください。さまざまな再発見があるにちがいありません。

▽篠原鋭一(えいいち)氏
1944年兵庫県生まれ。駒澤大学仏教学部卒業。
千葉県成田市曹洞宗長寿院住職。曹洞宗総合研究センター講師。
同宗千葉県宗務所長、人権啓発相談員等を歴任。
「NPO法人自殺防止ネットワーク風」代表。
公立の小学校・中学校・高等学校を巡り「いのちを見つめる」課外授業を続けている。
「生きている間にお寺へ」と寺院を開放。
「少年院」「拘置所」で特殊詐欺犯罪の結末を説き続けている。