文化 都響の魅力、再発見(4)

■音と感動が共鳴する都響の今とこれから
◇音楽監督 大野 和士さん
私と都響との関わりは、学生時代に歴代のマエストロたちの背中を追っていた頃を含め、もう40年以上になります。初めて都響を指揮した日、ベテラン奏者たちの真剣な眼差しに震えるような緊張と感動を覚えたことは、今も鮮明に心に残っています。かつての都響は、高いスキルを持つ個々の音が際立つ演奏が魅力的でした。現在は個性を保ちながら、楽曲の世界を一体となって描くオーケストラに進化したと実感しています。
また、都響は都民の皆さんとのつながりも深く、「サラダ音楽祭」では0歳から参加できる楽曲を演奏し、子供たちが自由に音に触れ合う時間を提供しています。目をキラキラさせて音楽を楽しむ子供たちの姿に、私自身、毎年このイベントをとても楽しみにしています。
60周年の節目を迎える今年、都響では記念すべき公演を多数予定しています。心に響く音楽との出会いを、どうぞお楽しみください。

Profile
都響およびブリュッセル・フィルハーモニックの音楽監督、新国立劇場オペラ芸術監督。これまでに、都響指揮者、東京フィル常任指揮者(現・桂冠指揮者)、カールスルーエ・バーデン州立劇場音楽総監督などを歴任。2015年、都響音楽監督に就任。フランス批評家大賞、朝日賞など受賞多数。文化功労者。

■若手楽員 interview オーケストラで夢を奏でる
◇オーケストラに最後の魔法をかけるのは観客の皆さん

コンサートマスター 水谷 晃さん

・ヴァイオリンを始めたきっかけは?
小学4年のとき父の仕事でインドネシアに渡り、言葉もわからない孤独な日々を救ってくれたヴァイオリン。言葉は通じなくても、音楽は人の心に届くという体験が、私を音楽の道へと導いてくれました。

・都響はどんなところが魅力?
都響には、音にすべてを懸ける仲間がいます。コンサートマスターとして、全体を見渡し、最高のパフォーマンスを引き出すことが喜びであるとともに、音楽を通して子供たちの感性や創造力を育むことも、私たちにできる大切な役割と信じて活動しています。ぜひ一度、都響の舞台を体感してください。オーケストラの演奏に最後の魔法をかけてくれるのは、観客の皆さんなのですから。

Profile
桐朋学園大学音楽学部を首席で卒業。2010年、群馬交響楽団にて国内最年少でコンサートマスターに就任。東京交響楽団を経て、2024年より都響コンサートマスターを務める。

◇指揮者とオーケストラ 観客の化学反応が魅力
首席チェロ奏者 伊東 裕さん

・音楽活動の原点は?
学生時代にプロの方々もいるオーケストラに加わり、ベートーヴェンの『運命』を演奏したときに感じた圧倒的なエネルギー。それが私の原点です。

・都響に入って驚いたのは?
楽団員の楽曲や指揮者の意図を読み取る力の高さ、そして初回のリハーサルから本番さながらの集中力と完成度。指揮者が変われば同じ曲でも音色や表情が一変し、そこにオーケストラ全体や観客の熱量が共鳴する、そんな化学反応こそが都響の魅力です。
生の音には、言葉では語り尽くせない響きや感動があります。60年の歴史が育んできた伝統を守りながら、次代につながる音楽を創っていきたいと思います。

Profile
東京藝術大学音楽学部を首席で卒業。同大学院音楽研究科修士課程を修了。ザルツブルク・モーツァルテウム大学、ミュンヘン音楽演劇大学にて研鑽を積み、2022年より都響首席チェロ奏者として活躍。

◇五感が喜ぶ生の音の迫力と特別な体験を!
ホルン奏者 鈴木 優さん

・ホルンの魅力は?
柔道少女だった私がホルンと出会ったのは、中学の吹奏楽部でした。次第にその魅力に惹かれ、さらに初めて生で聴いたオーケストラのホルンの華やかさに衝撃を受けて、本格的にプロを目指すようになりました。少し地味な印象のあるホルンですが、実は音の厚みや迫力など、演奏の土台を支える重要な楽器でもあります。そこに命を懸けて吹いていますし、やりがいも感じています。

・オーケストラの楽しみ方は?
「オーケストラ=敷居が高い」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、都響ではゲーム音楽をはじめ多彩なプログラムを演奏していますので、生でしか味わえない圧倒的なサウンドを五感で感じていただけたら嬉しいです。

Profile
東京藝術大学音楽学部卒業。藝大フィルハーモニア、東京交響楽団を経て、2019年より都響ホルン奏者として活躍。

■絶好調の都響からますます目が離せない!
指揮者 山田 和樹さん(バーミンガム市交響楽団音楽監督)

・祝60周年 Special Message
東京都に都響あり。そこはまばゆい音楽が常に溢れ出す泉のような場であり、60年のたゆまぬ努力の結果、日本において最もヨーロッパ的なサウンドとアンサンブルを誇る楽団に成長されたことは、本当に素晴らしいことだと思います。 現在は、音楽活動に加えて、常に都民をはじめとした社会とのつながりや連携を大切にしていく姿勢が全面に打ち出されていることにも頭が下がります。
東京都交響楽団創立60周年、誠におめでとうございます。