くらし 【特集】ごみゼロへの挑戦 2050 ゼロ・ウェイストちよだ(1)

私たちの暮らしの中でごみを減らすことは身近な課題の一つです。
地球を守り、限られた資源を有効に使う。
私たちがこれからも継続的に暮らしていくためにごみの削減は不可欠です。
一人一人、一つ一つの取り組みで、ごみゼロへ挑戦していきましょう!

■ごみゼロの日
5月30日は、「5(ご)」「3(み)」「0(ゼロ)」の数字の語呂合わせから、ごみの減量化と再資源化を啓発し、環境美化活動を行う「ごみゼロの日」として定められています。1970年代に愛知県豊橋市の山岳会会長・夏目久男さんによる「自分のごみは、自分で持ち帰りましょう」をスローガンとした啓蒙活動の呼びかけで始まった運動です。
やがて、この運動は全国に広がり、環境省公式HPによると、5月30日~6月5日を「ごみ減量・リサイクル推進週間」として、3R(Reduce…リデュース・ごみを減らす)、(Reuse…リユース・繰り返し使う)、(Recycle…リサイクル・資源として再利用する)の推進運動、不法投棄監視パトロールなどが行われています。

■社会が抱えるごみ問題
1950年代後半から1970年代前半にかけて高度経済成長期を迎えた日本は、工業化と技術革新に伴う電化製品や石油から作られるプラスチックの普及などで人々の暮らしが豊かで便利になる一方、ごみの排出量は1960年から1980年の20年間で約5倍まで増加しました。また、産業活動によって生み出された化学物質が不適切に処理され、深刻な公害病の被害ももたらしました。まさに、ごみの問題は社会が抱える大きな課題となっていったのです。
その後、2000年をピークに減少するものの、1980年代後半頃から普及したペットボトルや大型家電などごみの種類も多様化していきます。現代では、焼却処理で発生する温室効果ガスによる気候変動やプラスチックによる海洋ごみなど環境にもたらす問題は続いています。

■なぜ、ごみを減らすのか
近年、気候変動に伴う酷暑やゲリラ豪雨など、都市における新たな災害ともいえる温暖化のリスクを感じるようになりました。
ごみの焼却時には多くの二酸化炭素などが排出されるため、ごみの問題と地球温暖化は密接に関連しています。
また、私たちが使っている多くのものは地球の資源から作られています。限りある資源を長く使い続けるためにも、ごみを減らし、再利用していくことが必要です。
そして、都内ではごみを埋め立てる最終処分場も大きな課題を抱えています。東京湾にある最後の埋立処分場である新海面処分場は船の航路確保のため、これ以上面積を広げることができません。
さらに、ごみの処分には収集、運搬、焼却のそれぞれの工程で多大な費用がかかります。現在稼働している清掃工場は更新時期にきており、ごみの減量が進まなければ今後の更新費用の増大が予想されます。
2023年度、区がごみ処理に費やした費用は区民1人当たり約2万5000円でした。ごみを減らすことは経済的負担軽減にもつながります。

■ごみをゼロにする
区では清掃工場を持たない地域特性から、ごみの減量を目的に、これまで3Rを促進し、他区に先駆けて2007年からプラスチックの回収・リサイクルに力を入れてきました。その結果、40%台前半で推移していた資源化率は、現在では60%に迫るまで向上しています。
また、オフィスビルが多く、事業系ごみが全体の9割近くを占め、その内、飲食店やホテルの調理中に出る食材のくずや食べ残しの生ごみは約3割となるため、事業系ごみ・生ごみの抜本的な対策が求められています。
区は持続可能な都市の実現に向けて、2050年度までに無駄や浪費をなくして、ごみを極力出さない、焼却量や最終処分量を限りなくゼロに近づける、「2050ゼロ・ウェイストちよだ」を目指しています。
この「ゼロ・ウェイスト」という言葉になじみがない方もいるかもしれません。「ウェイスト(Waste)」は英語で「廃棄物」という意味です。「浪費する」「無駄にする」などの意味もあり、無駄や浪費をなくし、ごみを出さない、ごみをゼロにすることを目標とする取り組みを「ゼロ・ウェイスト」と言います。これは1996年にオーストラリアの首都キャンベラが世界で初めて宣言し世界各地に広がりました。
「2050ゼロ・ウェイストちよだ」では、実現のための4つの基本方針にこれまでの取り組みに加え、新たに26件の取り組みを行います。

■本当にごみゼロは可能か
果たしてごみをゼロにすることはできるのでしょうか。暮らしていくうえで必ず出てしまうごみをなくすことは一見難しいように思えますが、私たち一人一人の心がけと行動で限りなくゼロに近づけることができます。
その一つとして、これまでの3Rに加え、根本的なモノやサービスを生み出す段階から、リサイクル・再利用を前提に設計し、資源の利用を抑え、循環させるサーキュラーエコノミー(循環経済)という考え方が重要です。すでに、再生プラスチックを使った製品開発や生ごみを堆肥だけでなく水にする技術などさまざまな取り組みが行われています。
そして何より私たちも、ごみを捨てるときだけでなく、購入するとき、消費するとき、それぞれの場面で意識してごみを減らす取り組みを一つ一つ行うことで、ごみゼロの実現へ近づきます。それは地球を守り、私たちが安心して暮らすことへつながるのです。
さぁ「2050ゼロ・ウェイストちよだ」スタートです!

※本紙に図が掲載されています。
出典:令和3年版環境・循環型社会・生物多様性白書(環境省)