- 発行日 :
- 自治体名 : 東京都千代田区
- 広報紙名 : 広報千代田 令和7年(2025年)9月5日号No.1647
■認知症の理解を深めるため、九段坂病院の山田正仁院長にお話を伺いました。
◇認知症を簡単にご説明いただけますか。
認知症とは、認知機能(記憶、判断力、物事を順序立てて実行する能力、言語能力など)が低下し、その結果として日常生活に支障をきたす状態を指します。また、認知機能が年相応と比べて下がっているけれども、日常生活にほぼ支障がない状態を軽度認知障害(MCI)と呼びます。認知症にはさまざまな原因がありますが、約3分の2がアルツハイマー病です。
認知症とMCIとの違いは認知機能の低下による日常生活への支障の有無で決まります。「年相応の認知機能」とMCIの境目の決め方はなかなか難しく、認知機能テストで一定の数値を下回ったらという決め方になります。
◇MCIから認知症への進行を防ぐため、できることはありますか。
MCIの人に対するアプローチは2つあります。1つは薬で、原因がアルツハイマー病の場合、最近出てきた新しい薬(抗アミロイド抗体薬)を使用すること。もう1つは生活習慣の改善です。高血圧や糖尿病などの生活習慣病のコントロール、運動、バランスの良い食事、社会的交流の維持が重要とされています。
特に食事面では、高齢者はやせすぎも良くなく、たんぱく質をしっかり取ることが大切です。また、歯の健康を保ち、20本以上使える歯を残すことも重要です。つまり、食事(※1)、運動(※2)、社会的交流(※3)の3つが認知症予防の大きな柱となります。
◇若年性認知症について教えてください。
若年性認知症(※4)は65歳未満で発症する認知症です。認知症は高齢になるほど増えるため、若い人では少ないのですが、40代~60代前半でも見られ、それより若い層では遺伝的要素が大きくなります。調査によると発症者は10万人当たり約50人と推計されています。若年性認知症は通常の認知症と比べ進行が早い傾向がありますが、他の疾患を併発していることが少ないため、認知症発症後の寿命自体は長くなる傾向にあります。また、介護者の多くが配偶者や本人の親であることや、経済的問題(働き盛りで子どもの養育費などの負担がある)など、高齢者の認知症とは異なる支援が必要です。
◇認知症と気付くための注意点、接する際に心がけることは何ですか。
認知症を発症すると、今までできていたことができなくなります。複雑な仕事をされている人は、そこで気付かれることが多いと思います。以前と比べてちょっとおかしいという段階で、早期に診断をつけて対策を取っていく必要があります。
若年性認知症の場合、以前は若い人もアルツハイマー病の可能性があるという認識が十分でなかったため、うつ病などと勘違いされて、なかなか認知症の診断がつかないことがありましたが、現在は改善されています。また、多くの高齢者が働く時代になったため、職場における認知症の認識はより身近なものになってきていると思います。
まず、認知症は病気であり、本人のせいではないことを理解してください。つい「しっかりしなさい」などと言ってしまいがちですが、それにより本人は落ち込んだり怒ったりしてしまいます。それを避けるため、介護のプロの力を借りるなど適切な支援を受けて対応しましょう。家族だけで抱え込まず、家族にしかできないことを行うという余裕を作ることが大切です。
◇今後の取り組みについて教えてください。
早期診断と予防に力を入れていきたいです。MCIの段階で診断をつけ、進行を遅らせる薬による治療や生活習慣の改善を行うことが重要です。将来的には発症前の段階での予防を目指し、健康診断でアルツハイマー病などのリスクを見つけ、ワクチンなどを含めた予防的な方法が取れる体制を作りたいと考えています。
また、区の認知症をとりまく状況は比較的恵まれています。人口はそれほど多くなく、高齢化率も全国平均と比べて16.7%程度と低いからです。地方では高齢化が進み、対応は待ったなしですが、区はそういった状況を見ながら対策を考える時間的余裕があります。認知症対策をしっかり行うことで、他の地域のモデルになるポテンシャルは十分ありますので、協力して取り組んでいきたいと思っています。
■区の認知症に関する取り組みを紹介
◆「食事」に関する取り組み(※1)
◇高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施
◆「運動」に関する取り組み(※2)
◇認知症機能維持向上教室
身体を使って脳トレいきいき教室
◆「社会的交流」に関する取り組み(※3)
◇認知症カフェ
◆「若年性認知症」に関する取り組み(※4)
◇若年性認知症の相談窓口
・東京都若年性認知症総合支援センター【電話】03-3713-8205
・千代田保健所保健サービス課保健相談係【電話】03-5211-8175
◇認知症本人ミーティング「実桜(みお)の会」
・在宅支援課地域包括ケア推進係【電話】03-6265-6485
■補聴器購入費助成を拡充
60歳以上の方を対象に補聴器購入費助成の拡充を行っています。難聴は認知症のリスク因子の1つと言われています。そのため区では、住民税課税世帯は7万2,450円、非課税世帯は14万4,900円まで助成上限額を引き上げています。
■世界アルツハイマー月間イベント ちよだはあとブックス
1994年「国際アルツハイマー病協会」(ADI)が、世界保健機関(WHO)と共同で毎年9月21日を「世界アルツハイマーデー」、9月を「世界アルツハイマー月間」と定め、国や自治体でさまざまな取り組みが行われています。区では区内の書店および大学図書館などの協力を得て、「千代田区認知症ガイドブック(認知症ケアパス)」「別冊「いまのわたしで生きていく」」および認知症関連書籍を紹介するコーナーを配置し、認知症に関する普及啓発活動を行っています。
日時:~9月30日(火)
場所:区内図書館(千代田図書館、日比谷図書文化館、四番町図書館)、大学図書館(専修大学、共立女子大学・共立女子短期大学、日本歯科大学、東京歯科大学、二松学舎大学、上智大学、明治大学)、書店(丸善お茶の水店、三省堂書店有楽町店)、他(RAKU SPA1010神田)
問合せ:在宅支援課地域包括ケア推進係
【電話】03-6265-6485