- 発行日 :
- 自治体名 : 神奈川県横浜市
- 広報紙名 : 広報よこはま 令和7年1月号
◇山
「循環型社会」というと、難しく聞こえるかもしれませんが、身近なところから取り組めるんですよね。
一例として、横浜市では、家庭で食べきれない未使用の食品を寄付する「フードドライブ」を実施しています。CO2排出の原因にもなっている「食品ロス」の削減や、「食の支援」につながる、環境にも人にもやさしい取組です。
区役所などの公共施設、市内で開催するイベント等に食品を持ち寄ってもらい、集めた食品はフードバンク団体や社会福祉協議会を通じて、ひとり親家庭やこども食堂、福祉施設などに寄贈しています。2023年度には10トン以上の食品を寄贈しました。市内の小売店舗でも実施されるなど、取組はどんどん広がっています。今後も、「もったいない」を「ありがとう」につなげるフードドライブの取組を広げていきます。
また、ご家庭で揚げ物に使った油(廃食油)を再資源化し、飛行機の燃料に生まれ変わらせるユニークな取組に参画しています。市民の皆様に、専用ボトルに廃食油を入れて、スーパーなどの回収スポットに持ち寄っていただいています。廃食油から作られた航空燃料は、従来の燃料に比べてCO2排出量を約80%削減することができると言われているんです。
一人ひとりの行動の積み重ねは、やがて、社会を変える大きな力になります。そして、市民の皆様に、生活の中の身近な行動が循環型社会につながっていることを実感していただきたい、と思っています。
◇ファ
イケアにはレストランがあるのですが、レストランのコーヒーから、大量のコーヒーかすが発生します。イケア港北独自の取組として、それを農家の方に週1回約100kgお渡しして、肥料の原材料として利用していただいています。
◇山
横浜市でも、下水を処理する過程で発生した「リン」を取り出し、それを肥料として市内の農家で使っていただく取組を開始しています。下水が農家にとって価値ある資源に変身するとは思いもよりませんでした。
その他にも、使用済みペットボトルを回収して加工し、新たなペットボトルを作る取組も進めています。この方法だと、一からペットボトルを作る方法に比べて、製造時に発生するCO2を約60%減らすことができるんです。さらに不要になった服を回収して加工を行い、新たな服に生まれ変わらせる取組等も進んでいます。技術が進化すれば、さらに色々なものがリサイクルできるようになると思います。
◆環境にも人にもやさしいまちへ
◇ファ
横浜市は先進的な気候変動対策のほか、子育て支援にも最優先に取り組んでいて、とても住みやすいまちだと思います。横浜市とイケアの間に、持続可能な社会に向けて、良きパートナーシップがあることを幸せに思います。イケアは今後も、人々が働き、生活する環境を支援したいと思っていますし、社会的・経済的に困難な状況にある方へのサポートも行っていきます。私の大好きな横浜がより良いまちになるようできる限りの貢献をしたいと思っています。
◇山
横浜市としても、環境先進企業のイケアとのパートナーシップは心強く、今後も、新たな取組を一緒に生み出せたらと思います。これまで捨てられていたものを再利用や再資源化することで、生活に役立つ製品として生まれ変わらせ、それを市民の皆様の日常の中でご利用いただく。こういうサイクルが浸透すれば、「環境にも人にもやさしいまち」にさらに近づくと思います。
●ペトラ・ファーレ
・イケア・ジャパン株式会社 代表取締役社長(CEO)兼Chief Sustainability Officer(CSO)
・スウェーデン出身。2000年にイケア・スウェーデン入社。イケア・ポーランドの副社長などを歴任後、ベッドルーム部門の世界展開に関わるビジネス戦略や製品開発などの責任者として活躍。2021年8月から現職。
・趣味は子どもたちとのスキー、日本探索。
●イケアについて
1943年にスウェーデンで創業され、現在はオランダに本社をおく世界最大の家具量販店。現在、世界31カ国で店舗を運営(日本法人のイケア・ジャパンは2002年に設立)。
「循環型社会を促進させることで、イケアのビジネスを成長させながらも資源の再生を行う」という方針の下、カーボンフットプリントの削減に取り組むなど、気候変動対策の分野でリーダーシップを発揮している。