- 発行日 :
- 自治体名 : 神奈川県小田原市
- 広報紙名 : 広報小田原 令和7年3月号 第1271号
◆表門の役割
皆春荘の「顔」となる表門は長い間、西側坂道を上ってきた来客を温かく迎え入れる大切な役割を担ってきました。
寺社のような荘厳な門というよりも、一見、山里にある家のような素朴さを持つ門です。よく見ると、育ったままの形が残る自然な木材や装飾性の高い素材をふんだんに取り入れている他、伝統的な建築技術を持つ職人が手掛けたであろう工法が採用されているなど、随所に遊び心を感じられる造りとなっています。建立当時、訪れた人の緊張をほぐし、親しみやすさを生むために、この素朴さと遊び心を門に表現したのかもしれません。
◆職人の技で未来につなぐ
この度の整備工事にあたっては、表門の意匠を確実に保全しながら進めるため、小田原の宮大工棟梁・芹澤さんをはじめとした伝統工法を受け継ぐ職人に施工していただきました。
表門に見られる伝統工法で、最も特徴的なものが「こけら葺(ぶ)き」です。屋根の覆い方(葺き方)の一種で、木材を手で割って薄くした板(こけら板)を、何枚も重ねて屋根を覆う工法です。西日本の社寺建築によく見られ、関東では珍しい工法とされています。耐水性のある板を使って水はけを良くしたり、木目に沿って割られた板を並べることで隙間ができ、通気性が良くなったりと、耐久性が向上するよう工夫されており、その副産物として見た目にも美しいものとなっています。本来であれば、約20~30年に一度、葺き替えを行う必要がある工法です。表門の屋根は、いつ葺き替えられたか分からないほど劣化していましたが、この度の修復でその輝きを取り戻しました。
日本の木造建造物を守り、残していくために必要な伝統技術は、定期的に職人が劣化の状態や使われている工法など対象の状況を理解し、実際に施工をすることで受け継がれていきます。皆春荘の表門も更新しながら、職人の技と共に未来につないでいきます。
◆他にもさまざまな技術が使われています
《光付け》
柱や梁(はり)に使われる丸太材など、凹凸がある材料同士を光も漏れないほど密着させる加工技術です。
《竹割張》
竹の節の側面を削り取り、隣り合う割竹同士の間に隙間が空かないよう加工したものです。
《虫食い材》
一見洒落(しゃれ)た模様は、実は虫食いの跡です。古来より日本人の美意識に合い、使われてきました。
◆宮大工棟梁 芹澤さん
私が修理で大切にしていることは「古い部材をできる限り残すこと」と「一度の修理で完成だと思わないこと」です。何をどう残すかに正解はないので、知恵を駆使して考察し「適切を探す」ようにしています。また、修理は長年使われてきた工法と、その技術を後世につなぐことが目的です。その時々で最善を尽くし、当時の技術・文化を守りながら、次の世代の職人に次の修理を考えてもらうことが必要です。
伝統的な建築技術が施された建物が、現に存在していること自体に価値があり、皆春荘の表門も価値ある遺構だと思います。適切な部材・工法で無理のないように機能性を整えているので、不自然ではないきれいさがあります。「修理したけどしてないように見せる」のも、職人の腕の見せどころです。実は、ゆがみや高さも直していますが、パッと見では分からないはずです。木造建築は一つの門でも経年変化があります。木材がねじれているものを合わせていく作業は少し大変ですが、建てた当時を想像して整えています。
◆皆春荘周辺(板橋地区)の見どころ
板橋には、温暖な気候風土を愛した多くの政治家や軍人、文化人の別邸や別荘が建てられ、今もそのたたずまいを見ることができます。
《松永記念館・老欅荘》
〈徒歩2分〉
「電力王」と呼ばれた実業家であり、数寄(すき)茶人としても高名であった松永安左ヱ門(まつながやすざゑもん)(耳庵(じあん))が暮らした「老欅荘(ろうきょそう)」やゆかりの品を展示する「松永記念館」では、美しい庭園の散策もお勧めです。
《竹の小径》
〈徒歩3分〉
松永記念館から皆春荘までの道すがら「竹の小径(こみち)」と呼ばれる路地を通ります。歩くと心地よい風を感じることができます。
《皆春荘》
〈徒歩1分〉
《古稀庵》
〈徒歩5分〉
山縣が晩年を過ごした古稀庵の庭園は、相模湾と箱根山を借景に作られました。山縣の所有であった東京の椿山荘、京都の無(む)鄰(りん)菴(あん)と共に「山縣三名園」と称されています。
《三淵邸・甘柑荘(かんかんそう)》
NHK連続テレビ小説「虎に翼」のヒロインのモデルとなった三淵(みぶち)嘉子ゆかりの建物で、初代最高裁判所長官・三淵忠彦が別荘として建てた数寄屋家屋です。庭では柑橘(かんきつ)類が栽培されています。
※各施設の開館情報はそれぞれお問い合わせください。
その他のウオーキングコースもあるでござる!
問い合わせ:観光課
【電話】0465-33-1521
【WEB ID】P38621
問い合わせ:文化政策課
【電話】0465-33-1707