- 発行日 :
- 自治体名 : 神奈川県箱根町
- 広報紙名 : 広報はこね 令和7年2月号
■生きものを呼びこむための森づくり
小野譲史(おのじょうじ)
学芸員(森のふれあい館)
専門分野:動物
私の元々の専門は、生物の行動を科学的に研究する「動物行動学」です。森のふれあい館にきてからは、年々移りゆく箱根の自然を伝えるため、箱根を中心とした動物や植物など幅広く、日々勉強しながら、展示などを通じて来館された方々に紹介しています。箱根は、大涌谷や芦ノ湖をはじめ、仙石原湿原、ブナ林など多様な自然環境が狭い範囲で「箱庭」のように凝縮しているので、短い移動距離で様々な動植物を観察できて良いなと思いながらいつもフィールドに出かけています!
◇箱根やすらぎの森での活動日記 ~エコスタックをつくる~
園内の景観や園路の通行に支障になって切られた木や枝は、ただゴミとして捨てたり林に放置するのではなく、森づくりの一環として昆虫など小さな生きものの棲み処となる「エコスタック」としても活用しています。
エコスタックとは、伐採した木の幹や枝、落ち葉などを集積して、昆虫やノネズミたちなど様々な生きものが産卵場、エサ場、越冬場所として利用できる環境づくりのことを指します。
森のふれあい館にきてくれたお客さんと協力しながら森づくりを行います。生きものたちが活動することによって木や葉は、どんどん分解してなくなっていくので、定期的に足していきます。
・イモムシがいました。どうやらカミキリムシの一種のようです。
・こちらにも食痕や羽脱孔(うだつこう)(虫が外界に抜け出してきた穴)などが確認できます。
木々を敷き詰めるように安定して置くと、天敵から身を守ることのできる安心した休息所として、森に生息するノネズミに利用されることもあります。
・明るい林や草地にいるアカネズミ
・木登りが得意なヒメネズミ
▽さて、実際にどんな生きものがきているのか、木の枝を1本取り出してみてます!!
・アメイロカミキリ
・ヨツスジハナカミキリ
去年の夏は、上に挙げたカミキリムシの成虫を、設置したエコスタックでよくみかけたので、産卵していたのかもしれません。
こうして意識的に枝などを集めてあげることで、生きものの安定した隠れ家や棲み処となり、昆虫などをはじめとする様々な生きものたちが集まりやすい環境ができます。みなさんのお家のお庭などでもエコスタックをつくって自然に親しんでみてはいかがでしょうか。
次回は4月号。箱根湿生花園 ○○学芸員の予定です。お楽しみに!
※詳細は、本紙P.13をご覧ください。