健康 フレイル予防のための運動器科学講座が送る健康情報

フレイルは社会全体の病です。老若男女全ての市民の健康と幸せ無くして防げません。このコーナーでは、健康に役立つ情報を幅広くお届けします。

■高齢者の頚髄(けいずい)損傷
JA新潟厚生連小千谷総合病院 整形外科医師
田仕英希さん

高齢者の頚髄損傷は、救急の現場でもたびたびみられます。頚椎(けいつい)(首の骨)の中には脊髄(せきずい)の一部である頚髄が内蔵されており、手足の運動や感覚をつかさどっています。頚髄に傷がつくと、手足の運動や感覚が大きく損なわれます。
一般に頚髄損傷をはじめとする脊髄損傷は、転落、交通事故、スポーツなどといった大きなエネルギーによって頚椎が骨折したり脱臼したりする際に付随して起こりますが、現在わが国で最も多い頚髄損傷は、高齢者の転倒がきっかけとなっています。転倒の際にうまく手が出ずに額や顔などを直接打ち、首が過伸展(かしんてん)(大きく上を向いた状態)して発症します。よくみられる症状として、足の症状に比べて、手に強い感覚障害(ビリビリした痛みで他人に触られると強い痛みを訴えることが多い)と運動麻痺が見られます。さらに重症になると、手足の障害だけでなく呼吸をつかさどる筋肉の動きも悪くなり、肺炎などから命を落とすこともあります。
高齢者の頚髄損傷の特徴として、骨折や脱臼を伴わないものが多いことがあげられます。加齢による変化で頚椎に骨のとげができたり、椎間板(ついかんばん)が膨らんだり、靱帯(じんたい)が厚くなったりすることで、頚髄の通り道である脊柱管(せきちゅうかん)が狭くなり頚髄にストレスがかかりやすい状態であるため、小さなエネルギーでも頚髄に損傷が起こりやすくなるのです。
治療は骨折・脱臼の有無や神経症状の重症度によって、手術やリハビリテーションを行います。ただ症状がほとんど改善しないこともあり、軽減したとしても最終的に残ったしびれや痛みのために日常生活動作が著しく障害されることもあるため、まだまだ課題の多い外傷と言えます。
転倒の予防が最も重要なので、足の筋力やバランス力をキープするために下半身を鍛えることを日々心がけましょう。また、手足のしびれや動かしにくさがある場合には、頚髄の問題が既にある可能性があります。一度、MRIなどで現在の首の状態を把握することも、危険性を認識するうえでもおすすめします。

問い合わせ:健康・子育て応援課健康増進係
【電話】83-3640