- 発行日 :
- 自治体名 : 富山県黒部市
- 広報紙名 : 広報くろべ 2025年4月号
植物学者の牧野富太郎博士が明治時代に発表後、国内では確認されていなかったコヒガンザクラの品種〝幻の桜〟「八重彼岸(やえひがん)」が、黒部市、富山市、岐阜県で見つかったことを、ご存じでしたか?今回黒部でこの桜を発見した、「とやまさくら守の会」の会員で、桜の保全活動に携わる黒部市在住の八木秀治さんにお話を伺いました。
ウォー太郎:明治以降確認されていなかった桜が今回、何をきっかけに見つかったんですか?
八木さん:以前、植樹活動を行った浄化センターの敷地で、2017年春、見慣れない花が咲いていることに気付き、富山県中央植物園の大原隆明さんのもとに写真を持ち込みました。大原さんは植物の分類が専門で、私が持ち込んだ桜を見て、牧野博士が1908年にコヒガンザクラの変種として論文で発表した「八重彼岸」の可能性が高いと教えてくれました。その帰り道、富山市の富岩運河環水公園にも見慣れない桜があったことを思い出し、再度大原さんに報告。さらに、大原さんも同じ頃、偶然岐阜県で同様の桜を発見し、この3つの個体は「不明品」として研究が進められることになったのです。
ウォー太郎:八木さんが見つけた、見慣れない桜はどんな色や形をしているんですか?
八木さん:見つかった桜は花の直径が1・9~2・6cm。花弁は細長く、紫を帯びたピンク色の花。その他の特徴が牧野博士の論文と一致したほか、東京大学総合研究博物館に収蔵されている葉の標本とも特徴が同じだったことなどから、「八重彼岸」だという結論が出たのです。実は黒部市で確認された桜は、以前私たちの活動で別の品種として植えられたものでした。発見した際、偶然咲いていた桜に目が行き、桜に呼びかけられた気がしました。
ウォー太郎:桜を愛する八木さんだからこそ、幻の八重彼岸に気付くことができたんでしょうね。
八木さん:そうですね。黒部市をはじめ、県内で桜の植樹をしたり、一般家庭でも植えて貰おうと、様々な品種の苗木を頒布したりするなど、地道な活動を仲間とともに続けています。これまで黒部市内に植えた桜は5,000本程度で、枯れてしまったものもあるので、目標の1万本にはまだまだです。
◆NPO法人黒部まちづくり協議会「サクラワークショップ」八木秀治さん(79歳)
「1万本の桜を植えて黒部市を桜のまちにしよう」を合い言葉に植樹や保全活動を続ける、NPO法人黒部まちづくり協議会「サクラワークショップ」で20年以上活動し、活動に取り組む中でこれまでにも新品種を発見して名付け親の一人ともなっている。