- 発行日 :
- 自治体名 : 福井県福井市
- 広報紙名 : 広報ふくい 2025年2月10日号
年々増え続ける空き家が社会問題になる中、空き家を活用して新しい暮らしを始める人たちが増えています。
今回の特集では、「空き家を生かした暮らしを楽しんでいる人」に焦点を当て、空き家の魅力と可能性を紹介します。
空き家に対し、「古い」「汚い」「負の遺産」とマイナスイメージを持っているあなた、必見です。
■[カフェ×空き家]空き家が発想の原点に!
築72年の空き家を改修し、荒木別所町に令和6年8月にオープンした「古民家レトロカフェmona(モナ)」。
店内には、レトロ(懐古)な家具や家電が並び、どこか懐かしい雰囲気を味わうことができます。店主の小川舞さんが、カフェの開業を夢見てさまざまな物件を探す中で、この空き家にたどり着きました。「実家を思い出す建物の雰囲気と駐車場が広いところにひかれ、即決した」と言います。
なんと、この空き家に発想を得てカフェのコンセプトが生まれたそうです。「昔からある建物が持つ歴史や雰囲気は唯一無二なので、存分に生かしたいと思った。古民家と昭和レトロの相性はぴったり。お気に入りの空間になった」と小川さんは満足そうに話します。
「空き家を選んだことで、新築などと比べ、初期費用が格段に抑えられたこともよかった。今後も、古いものが持つ良さを多くの人に伝えていきたい」と笑顔で話してくれました。
(店内には地域の人から寄付された雑貨も並ぶ)
▽前所有者のコメント
実家が空き家となり、今後居住する見込みもないため、「福井市空き家情報バンク」に登録しました。今回、ご縁があって実家がカフェになりいつでも訪問できるため、本当に良かったです。祖父の代からの愛着のある家が生まれ変わり、末永く地域の皆さんに愛されることを心より願っています。
▽古民家レトロカフェmona 店主 小川舞さん
自分も以前、長年住んでいた家を手放したとき、次に住む人が見つかって、家が形として残るのがうれしかったのを覚えています。前の所有者さんが大切にしてきた家を、これからも大切につないでいきます。
■[二地域居住×空き家]想定外の発見や楽しさに出会える!
市内北西部にある築70年以上の空き家を購入した佐藤正明さん(仮名)一家。購入の理由は、「2人のこどもが思い切り遊べる広い家が欲しかった」から。普段は石川県のマンションで生活し、週末は福井で過ごす、二地域居住を楽しんでいます。
「ずっと同じ場所で生活していると息が詰まるので、近隣自治体で中古物件を探していた」という佐藤さん夫婦。いろいろな自治体の物件を探す中で、「土地・建物ともに広い」ことと「管理が行き届いた庭に魅了」され、この家に即決しました。
最初は、空き家に対し「朽ち果てている」イメージを持っていた正明さん。空き家情報バンクを見ていると、「意外ときれいな空き家が多く驚いた」と言います。実際に住むと、「不要だと思っていた土間や納屋などがとても便利で、新しい発見だった。庭の柿の木や家庭菜園で育てた野菜の収穫の楽しみもある。予期せぬ発見や楽しさにあふれている」と充実した生活ぶりを話してくれました。
▽前所有者のコメント
両親が立て続けに介護施設に入所し、10年以上空き家の状態が続いていました。愛着のある家なので、壊したくないという思いがあり、毎週掃除するなど管理を続けていました。
最後のチャンスと思い、福井市に相談したところ、引き継ぐ人が見つかり、すてきに使っていただいていて、とてもうれしいです。
※個人情報保護のため、仮名を使用しています。
▽現所有者 佐藤正明さん(仮名)
キッチンや浴室の位置を変えるなど、自分たち好みに大胆な改修をしましたが、費用は比較的安く済みました。ご近所さんにもよくしていただき、のびのび子育てができる福井での暮らしはとても楽しいです。
■[子育て世帯×空き家]こどもの成長に合わせて家も進化させる!
空き家は、築年数が経った古い家ばかりではありません。少しの改修で快適に居住できる空き家もたくさんあります。
市内中心部にある築17年の一軒家に住む鈴木慎吾さん(仮名)一家。夫婦とこども3人の5人暮らしです。それまでは、妻・美優さん(仮名)の実家で同居していましたが、家族が増え手狭になり、思い切って空き家を購入しました。決め手は「妻の実家から近い」ことと「庭が広い」こと。
「住む前から暮らしをイメージできるところが中古物件の良さ」だと話す慎吾さん。外装、庭、キッチン、2階のトイレの改修のみで、快適に生活できていると言います。
購入やリフォームの補助制度などもあり、金銭面でもメリットが多い空き家。「空き家を選んでよかった。同じ子育て世帯におすすめしたい」と笑顔で話してくれました。
(改修したキッチン。補助制度に背中を押され改修を決意した)
▽現所有者 鈴木慎吾さん(仮名)
こどもがいたずらで壁や床を傷つけても、大らかな気持ちでいられるのは、中古物件を選んだからだと思います。新築だったら気が気じゃなかったかも。
こどもの成長に合わせて、その時々に最適な状態に改修していくのも今後の楽しみです。
※個人情報保護のため、仮名を使用しています。