くらし [特集]森を生かす人たち(2)

■少人数で取り組む小さな林業『自伐型林業』
●価値ある森林へ
大規模な林業の手が届かない森を守り、育てることができる取り組みの一つとして、「自伐型林業」が全国各地で注目を集めています。
自伐型林業は、現在多くの自治体で支援が行われており、林業の担い手の増加や地方創生の切り札としても期待されています。

●自伐型林業の道づくり 小さく丈夫な道を作る
規模に関わらず、林業では作業や通行のための道を作ることが大切になります。
自伐型林業の道は幅が2.5m程度であり、小型機械で作業を行うため、山へのダメージも少なくすみます。山の地形に合わせ、何十年も使い続けることができるよう道作りが行われます。

道作りでは、道の左右の木もできるだけ残して活用。残した木は日光を遮り草の繁殖を防ぎ、雨の直撃から道を守る傘の役割を果たします。

▽自伐型林業の道作りの基準
道幅:2.5m
切り高:1.4m
崩れにくい道(崩れても修復しやすい)

●生活スタイルに合わせた自伐型林業の働き方
作業時間などを比較的自由に調整しやすい自伐型林業では、他にやりたいことをやりながら取り組む兼業型が基本スタイルになっています。
農業や観光、地域資源を使った仕事と組み合わせたり、ほかにメインとなる仕事をしながら副業として取り組んだり、自分に合わせた柔軟な働き方を選択できます。

●勝山でも始まった自伐型林業
勝山市で自伐型林業に取り組む先駆者のひとり、大久保さんからお話を伺いました。

・もりのこみち かつやま
大久保 千恵(おおくぼちえ)さん

▽自伐型林業をはじめたきっかけ
環境活動に関心を持ち、様々な活動を行う中で、自伐型林業のことを紹介してくれる人と出会いました。そこで興味を持ち、その人の活動を手伝い始めました。そのうち技術を向上させたいと感じるようになり、研修を受けて本格的に自伐型林業を学びました。

▽意義ある活動を自らのホームで
当初は福井市の友人を手伝うつもりで研修を受けていたのですが、「私のホームは勝山市では?この活動を勝山市でやらなくていいのか?」と考えるようになりました。
勝山市で自伐型林業に取り組むために自分で団体を作ろうと思い、2024年に「もりのこみち かつやま」を設立しました。

▽自然の恵みを活用する
自伐型林業では、山にある木や岩などを活用して何十年も続く道を作っていくことができます。
もともとエネルギーや環境問題に関心があった私にとって、そこにあるものを使うという手法が私の価値観にピッタリ来ました。また、山から生み出される薪やきのこ類、山菜なども魅力的です。

▽活動の中で苦労したこと
自分では山を持っていなかったので、活動する場所を探すのが特に大変でした。
山は複数の山主さんが分割して所有していますし、口頭で貸し借りが行われていることもあるため、自治体の地図と一致しないこともあります。また、山主さん自身もご自分の山がどこか、境目はどこか分からなくなっているケースも少なくありません。
苦労はありましたが、私たちの理念に共感し、山を貸してくださる方々が見つかりました。まだ経験の浅い私たちに大切な山(財産)を任せてくださったことには本当に感謝しています。

▽これからの目標
森林の良さや楽しさ、そして私たちの活動を積極的に発信していくことで、より多くの人に森への関心を持ってもらいたいと考えています。
そして何よりも、山に関わるプレイヤーを増やしていくことが不可欠だと感じています。そのためにイベントなども開催していきます。プレイヤーが増えることで勝山の森林が整備され、その資源が広く利活用されていく。それが私たちの目標です。

■5/17-19 自伐型林業研修会を開催
「もりのこみち かつやま」は、自伐型林業をより多くの方に知ってもらいたいと3日間の研修会を開催しました。
講師として、自伐型林業の経営が評価され旭日単光章を受賞された橋本光治氏(徳島県)をお招きし、参加者は、自伐型林業での道作りの大切さや重機を活用しての道の作り方などを教わりました。

■山との調和を目標としています
もりのこみち かつやま 木村 理俊(きむらみちとし)さん
自伐型林業に取り組んでいると、人間も自然の一部であることを強く感じます。
山には豊富な資源があり、山と人が上手に付き合うことで、山からたくさんの恩恵を受けることができます。
山を大切な財産として、持続的に活用するためにも、山との調和を図りながら林業に取り組んでいきたいと思います。