文化 ふるさと散歩道

■第366回 文化財編(43) 織物のまちを支えた先人を称えて
四季折々に美しい西山公園は、鯖江藩ゆかりの歴史公園です。前身の「嚮陽溪(きょうようけい)」は7代藩主間部詮勝が「与衆同楽(よしゅうどうらく)(衆と楽しみを同じくする)」の理念で安政3年(1856)に長泉寺山を拓いたことに始まり、中心の峯を「嚮陽山(城ヶ峯)」、南西側を「西山(玩月峯・鼠ヶ崎)」、東側を「東山(猿ヶ鼻)」と称して、人々が憩う遊園が誕生しました。
廃藩や戦争の苦境を乗り越えて鯖江のシンボルとなった西山公園には、現在、多くの石碑が移築され、まちの発展に尽力した先人の功績を伝えています。嚮陽庭園(東山)を中心とするエリアでは詮勝の理念を刻んだ「嚮陽溪碑」や製織の発展を称えて詮勝の孫・詮信が撰(せん)した「機業紀念碑」などを見ることができます。
さて、鯖江での機業勃興(ぼっこう)前夜、旧鯖江藩士らの転出で空地となった武家屋敷跡は、絹織物を盛んにしようと奮闘する人々の手で桑が植えられ、明治20年代には鯖江町を中心に次々と機業場が創業しました。明治31年(1898)8月建立の「機業紀念碑」には鯖江町・新横江村・舟津村・中河村・片上村・神明村・立待村・麻生津村の鯖江織物会員の名が刻まれ、現市域の織物業界が広く団結していた様子が窺えます。
星祭の夜、嚮陽山より眼下を臨み、鯖江の織物を支えた棚機女(たなばたつめ)の古(いにしえ)の音に耳を傾けてみませんか。
(文化課 藤田彩)

◇平成26年度指定の市指定文化財(2)
間部家墓所(深江町)
仁恵塚(平井町)
機業紀念碑・嚮陽渓碑(西山公園)
富田長秀墓碑(長泉寺町1丁目)