- 発行日 :
- 自治体名 : 福井県越前町
- 広報紙名 : 広報えちぜん 令和7年7月号
E子:こんにちは。
学H:こんにちは。さて今回は佐々生窯跡の出土遺物について説明していきます。
E子:よろしくお願いします。
学H:佐々生窯跡から出土している遺物について4月に説明したのを覚えていますか。
E子:確か瓦塔が見つかっていましたよね。
学H:その通りです。瓦塔のほかに高坏や皿などの食膳具、調理具、壺・甕などの貯蔵具、鉄てっぱつ鉢などの仏具が見つかっています。そして器種組性に中で仏具の比率が高く、一号窯よりも二号窯と灰原に集中していることが特徴です。
E子:鉄鉢とは何ですか?
学H:鉄鉢とは、もともと托鉢(たくはつ)僧が乞食のために持ち歩く鉢のことですが、仏前に供えたり、自らの食器として使ったりしました。漆器が主で、鉄製・石製・瓦製などがあります。広口の平たい形で後円がやや内側にすぼんでいます。このような器形を鉄鉢形といい、茶碗・花器・建水(けんすい)などに見られます。また鉄鉢は材料や大きさによって階層が分けられ、僧侶の階層によって使用する鉢が異なっていました。
E子:そのような細かい規定があるのですね。
学H:そうですね。規格は「上鉢・中鉢・下鉢」と三つあります。しかし、奈良県で見つかっている鉄鉢は七世紀~八世紀前半にかけて法量が安定せず、八世紀中頃から三法量分化するようになりました。
佐々生窯跡から見つかった鉄鉢は直径や器壁の厚さから三法量分化しています。そして福井県内では、佐々生窯跡以前の窯から鉄鉢の三法量分化は確認されていません。佐々生窯跡の操業時期は大仏造立の詔や国分寺の創建といった律令国家が本格的な国家仏教政策を施行した時期にあたり、社会的・宗教的事情が背景に存在したと考えられます。そのため越前における宗教的側面を考えるうえで重要な窯になります。
E子:出土した遺物からそのようなことまでわかるなんて驚きました。それに佐々生窯跡はとても重要な窯跡なのですね。
学H:その通りです。
次回からはまた別の窯跡について紹介していきます。
[引用・参考文献]
越前町教育委員会『朝日山古墳群・佐々生窯跡・大谷寺遺跡重要遺跡範囲確認調査報告書』二〇〇六年
越前町教育委員会『越前町織田史(古代・中世編)』二〇〇六年
河南町教育委員会『河南町文化財調査報告書7:須江窯跡群関ノ入遺跡』一九九三年