子育て [巻頭特集]25人学級広がる(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 山梨県
- 広報紙名 : 山梨県の広報誌ふれあい 特集号 春 vol.84
■25人学級を[小学校]全学年に!
25人学級が2025年度以降、小学校の全学年に広がります。
県は、21年度から全国で初めて公立小学校の1年生に25人学級を導入しました。
その後、対象を順次拡大し、24年度には小学4年生まで範囲を広げました。
導入後の検証結果を受け、25年度からは5年生に、26年度からは6年生にも対象学年を広げることを決めました。
山梨県は、小学校の全学年で国の基準を上回る学級編制となります。
学校の先生からは「子どもたちにきめ細かな指導ができる」「教師の負担軽減にもつながった」といった好意的な意見が寄せられています。
25人学級によって、子どもたちを取り巻く環境はどんなふうに変わったのか。
学校現場のリアルな声をお届けします。
◇[現場ルポ]一人一人の個性を育み自立した学習を支援する
韮崎市立甘利小学校。校舎の窓から雄大な富士山の姿を望むことができる。1年3組の教室では、休み時間に子どもたちが図鑑を開いたり、友達同士ではしゃいだりしていた。
授業の開始を告げるチャイムが鳴った。子どもたちは我先にと自席に戻る。日直が「起立・礼・着席」と合図するころには、すっかり落ち着き、教科書や筆箱を揃え、授業の始まりを静かに待つ。2校時は算数の授業だ。
担任の内藤好美先生が「これ、わかる人?」と尋ねると、「はい、はい!」と、子どもたちは再び元気いっぱいに手を挙げる。
そうして先生に指名された児童は立ち上がり、丁寧に椅子を戻して黒板の前に向かう。その間、クラス中の視線が彼女に集中する。「わたしは、こうだと思います」
内藤先生はすぐに答えを言わず、他の児童も指名していく。「違う考えの人はいるかな?」「他の人はどう思う?」代わる代わる、他の子どもたちが発言をする。「私も同じ考えです」「こうすれば、もっといいと思います」ー。友達の発言を受け、ノートに答えを書き足す子どももいる。
次の問題に移る際、「ぼく、最初から知ってたもん…」最後列の児童がポツリとつぶやいた言葉に対し、内藤先生は「知ってたね」と微笑みかけた。
◇導入効果が数字にも表れる
山梨県は2021年度から24年度にかけて25人学級導入の効果検証を行いました。25人学級の導入前後で、子どもたちの学校生活にかかわる意識、学力(対象教科は算数)がどのように変化したかを調べたものです。
すると、「自分の良いところを言えますか」「決められた仕事をしっかりやっていますか」といった自己肯定感や日常生活に関する意識調査の多くの項目で、導入後の学級に良い影響が見られました(図1、図2)。また、記述問題の「無解答率」、つまり何も答えを書かなかった割合は、導入後の学級で低くなっていました。これは、授業中の教員の丁寧な声かけや巡回指導により、児童が最後まで粘り強く問題に取り組む姿勢が習慣になっていることをうかがわせる結果となっています。
25人学級の大きなメリットは、先生との「距離」が近くなることです。学習が遅れている児童や、生活態度が気になる児童に対して、先生のフォローがより行き届くようになりました。学校現場からは、物理的な距離が近くなったことで、教室の一番後ろの席で子どもがつぶやいたひとり言に対しても、反応がしやすくなったという声も届いています。甘利小学校1年3組担任の内藤先生は、こう話します。
「過去に、28人の1年生のクラスを受け持ったことがあります。それが、いまは20人。たった8人の差ですが、かなり違います。本当に、ここにあと8人いたの?と思うくらいです」
児童側から見ても、先生に相談を持ちかけやすくなったと言えるでしょう。先述の調査でも「困ったときに先生や友達に言えますか」という質問に対して、導入後の学級のほうが、「いつも」と答えた割合が4・4ポイント高くなっています(図3)。
[図1]「自分の良いところを言えますか」という問いに対して肯定的な回答をした児童の割合
[図2]「決められた仕事をしっかりやっていますか」という問いに対して肯定的な回答をした児童の割合
[図3]「困ったときに先生や友達に言えますか」という問いに対して「いつも」と回答した割合
「令和6年度少人数教育推進検討委員会報告書」を基に作成