- 発行日 :
- 自治体名 : 山梨県南アルプス市
- 広報紙名 : 広報南アルプス 令和7年1月号 No.262
まる博レポート
■めでたき新春に伝承館で巳(ヘビ)と出会う
2025年、新たな年を迎え、干支も辰(たつ)から巳(へび)へと変わりました。巳年はヘビの持つイメージから、「新たな事が始まる年」とされています。今年の干支であるヘビは、古くから世界中で信仰の対象とされてきました。ヘビは冬眠し、春になると目覚める様子や脱皮を繰り返して成長することから、「死と再生」の象徴とされる一方、牙と毒を持つことから畏怖(いふ)の対象でもありました。
ギリシャ神話では、ヘビは生命力の象徴とされ、杖にヘビが巻きついたモチーフは「アスクレピオスの杖」と呼ばれ、医学・医療の象徴として救急車などにも描かれています。このように、現代の生活の中にもヘビに込められた意味を見つけることができます。
日本で人々のヘビに対する思いが造形として表現されるのは縄文時代中期(約5500〜4500年前)にさかのぼります。縄文時代の人々は土器や土偶に様々な形でヘビを文様の一部として表現しています。縄文時代中期の前半には「抽象ヘビ文」(写真1・2)と言われるヘビ文様がみられます。「抽象ヘビ文」は円形や口を開いたかのような「く」の字状の頭部と、大きくうねった太い胴部、細く長い尾部といった形で表現されています。一見するとヘビのようには見えませんが、これまでの研究によって現在はヘビを表現した造形と考えられています。
縄文時代中期の中頃になると「抽象ヘビ文」は見られなくなり、代わって立体的なヘビ文様が表現されるようになります(写真3・4・5)。この頃のヘビ文様はくねくねと土器を這いまわるようなヘビや、とぐろを巻いているヘビ、大きく口をひらいて今にも襲い掛かりそうなヘビなど様々な姿をしているのが特徴です。表現される場所も土器だけではなく土偶にも表現されるようになります。
他の文様と一緒に描かれる縄文時代中期のヘビ文様は頭部と頸部、そして頭部とは区別できる体部から成り立っています。この特徴を知っていれば土器や土偶の中に潜んでいるヘビ文様を見つけ出すことが出来ます。
ふるさと文化伝承館では市内の遺跡から出土した多くの縄文土器を展示していますが、展示している土器の中にもたくさんのヘビ文様が潜んでいます。2025年の干支であるヘビを伝承館の土器から見つけ出して、縄文時代の人々の思いとヘビの神秘性を感じる、そんな一年のスタートはいかがでしょうか。
文・写真:文化財課
写真は本紙をご覧ください。
■新春ミニ企画「あれもヘビ!これもヘビ?」展
場所:ふるさと文化伝承館(木曜日休館)
期間:1月22日まで
*掲載した資料以外の資料も展示いたします。ぜひヘビを探してみてください。