- 発行日 :
- 自治体名 : 山梨県中央市
- 広報紙名 : 広報ちゅうおう 2025年7月号
◆膵臓(すいぞう)がん治療の最前線
山梨大学医学部附属病院消化器外科 特任助教 齊藤亮
〈進歩する膵臓がん治療〉
膵臓はお腹の深いところにあり、主に消化液を分泌する機能と、血糖のコントロールをする機能を担っています。この膵臓にできる悪性腫瘍である膵臓がんは、日本では男女ともに6番目に多いがんとなっており、がんによる死亡数では男性で4位、女性では3位となっています。山梨県では年間約300人が膵臓がんと診断されており、70〜80歳代の高齢の患者さんが多いことも特徴です。近年では検診制度の普及により、手術が可能な段階で早期発見されることも増えており、また手術の前後に薬物(抗がん剤)治療を行うなど、集学的(しゅうがくてき)治療(手術や抗がん剤治療などさまざまな治療法を組み合わせること)が一般的となりました。その効果もあり、徐々にではありますが、膵臓がんの治療成績は向上しています。我々は内科、外科、放射線科、化学療法部、検査部、コメディカルなどが密に連携をとり、ワンチームで膵臓がん治療に取り組んでいます。
〈膵臓がん手術の最前線〉
手術においても大きな変換点を迎えています。ロボット手術の台頭です。膵臓がんの手術には大きく分けて、右半分を切除する膵頭十二指腸(すいとうじゅうにしちょう)切除と、左半分を切除する膵体尾部(すいたいびぶ)切除があります。特に前者の膵頭十二指腸切除では、十二指腸や胆管(たんかん)なども一緒に切除し、さらに1〜2mm程度の膵管(すいかん)と腸を繋ぎ合わせるなど、非常に細かい再建(さいけん)手技も要求されます。この場面において、ロボットの特徴を最大限に生かすことができます。すなわち、従来の開腹手術を凌駕(りょうが)する正確さでこれらの細かい操作を行うことができるのです。現在ではいずれの術式についても、多くの症例をロボット手術で行っています。ロボットを用いることで、小さい傷で、手術中の出血量が少なく、患者さんの体への負担が小さい手術が可能となります。その結果、高齢の患者さんや併存症を有する患者さんにも、安全な手術を提供することができ、術後の合併症が少なく、今までよりも半分程度の入院期間で退院が可能となっています。
〈おわりに〉
膵臓がんに対しては、手術を中心とした集学的治療が行われ、治療成績の向上に取り組んでいます。患者さんにとって負担が少なく、スムーズに社会生活や日常生活に復帰できるよう、最前線のロボット手術を提供しています。
企画 一般財団法人 里仁会