くらし 市長エッセー vol.39

■共にある、暮らしの中で
「北に犀川、千曲川」と県歌『信濃の国』にもあるように、長野市は雄大な川の流れによって肥沃(ひよく)の地、善光寺平が形成され、豊かな自然から恵みを受けて発展してきた。水は人の暮らしに欠かせないものだから、水の豊かな地域であることは喜びである一方で、大きな水害にも見舞われてきたのは歴史が証明するところ。
現在、国において「信濃川水系緊急治水対策プロジェクト」という大型事業が展開されている。これは、令和元年東日本台風により甚大な被害が発生した信濃川水系において、国、県、市町村が連携し河川整備によるハード対策と地域連携によるソフト対策を一体的かつ緊急に実施する大規模プロジェクトであり、市内でも各種の対策が行われている。このプロジェクトの一つに、大町ダム等再編事業がある。
これは、大町市にある3つのダムで蓄えている水量の一部を洪水対策用に振り替えるというもの。ここで大切なことは、将来にわたり安定的にダムに蓄えられる水量を確保していくことである。
しかし、ダムには常に土砂が流入するため、その土砂を取り除き、運び出す必要がある。そこで、新たに土砂輸送用トンネルを造り下流に運ぶ、という計画だ。
過日、いよいよ本格的にトンネル工事が始まるのを前に、大町市での着工式に参加した。現地への道のりはワクワクした気持ちだった。この工事を請け負った建設会社の社長は大学の同期生で、同窓会では何度か会ったが、仕事の現場で会うのは初めて。式で、施工者を代表しての彼のあいさつは、大規模プロジェクトに関わることへの喜びと、安全工事への決意が示された。学生時代から、さらにりりしさが増した彼の姿には、人の暮らしと国土の安全を守るための決意が表れており、「さすが!」と心の中でつぶやいた。別れ際、固い握手を交わしたとき、それぞれの立場や役割は違っても、国の発展の基礎を固められたらいいと思った。「これまた国の固めなり」と県歌の歌詞とメロディーが頭に浮かんだ。