- 発行日 :
- 自治体名 : 長野県伊那市
- 広報紙名 : 市報いな 令和7年9月号
■生き物の小宇宙
委員 大瀬木恵一(おおせぎ けいいち)
私の担当している上新田・下新田・狐島・境は、住宅地などへの農地転用が進む地区です。そのため、農地と宅地がモザイクのように入り組んでいて、農業を続けていくことが難しくなってきました。
しかし、この地域で取れるお米は、標高3000ⅿを超える仙丈ヶ岳や塩見岳を源とし、ミネラルをたくさん含んだ三峰川の水で育てられた美味しいお米で、「川下り米」と呼ばれ高く評価されています。そこでは、春の「代掻き」、「田植え」から秋の「稲刈り」まで、農家の皆さんが丹精込めてお米を作っています。
今回は、このような市街地の中にある田んぼが、なぜ「小宇宙」なのかお話ししたいと思います。
田んぼには、稲だけでなく、泥の中で生きる微生物、水の中で暮らすトンボのヤゴ、タニシ、ミズカマキリなど、水辺(畦)には、ヘビ、ネズミ、モグラ、カエルなど、そして田んぼ周辺を飛びまわる鳥、トンボ、チョウなど、それぞれ異なる環境を利用して、実に多くの生き物が暮らしています。
このように、田んぼには多様な命や自然の営みが凝縮されており、まるで一つの「小宇宙」のように複雑で調和の取れた生き物たちの暮らしが存在しています。
日本人の主食であるお米を供給するための田んぼとしてだけでなく、そこが「生き物の小宇宙」であること、水源涵養や洪水防止の機能を持つこと、そして、四季折々に変化する美しい田園風景が、日本の国土や人々の生活を豊かにする上で欠かせない大切な存在であることを皆さんにご理解いただきたいと思います。
お子さんと一緒に、田んぼの「小宇宙」を覗いてみませんか。畔は足場が悪いので、交通量の少ない農道から、近寄ってじっくりと観察してみてください。掲載した以外にもたくさんの生き物を見ることができます。
■農地の適正管理を!
農業委員会では、年に1回、地区内の農地の情報を得て、農地パトロールを実施しています。
法律は、「農地の権利を有する者(所有権または賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を有する者)は、当該農地の農業上の適正かつ効率的な利用を確保しなければならない。」とあります。
年々、農業者(耕作者)の高齢化や不在地主などの理由により、耕作されない農地が目立つようになっています。
農地に雑草が繁茂し遊休荒廃化してしまうと、
・火事や不法投棄の恐れ
・病害虫の発生や鳥獣の住処
周辺の農地や近隣住民に多大な迷惑がかかり、地区の問題となるケースもあります。
何かと敏感に騒がれるご時世!自分の財産をどう管理しても自由ということでなく、加害被害なく日々過ごしたいものですね。
▽事情で休耕としても
・定期的な草刈り
・トラクター等での耕起
▽耕作を誰かに頼みたい
・地区担当の農業委員へ
◆農業者年金をご存じですか?
「老後はゆとりのある生活がしたい」そんな願いを支援する強い味方が、農業者年金です。
▽農業者年金の加入資格
・国民年金第1号被保険者
・年間60日以上農業に従事
・60歳未満
▽農業者年金の特徴・メリット
・農業者の方なら広く加入できます。
・少子高齢時代に強い積立方式
・確定拠出型の年金です。
・保険料は自由に決めることができます(月額2万円〜6万7千円の間)。
・終身年金です。80歳前に亡くなられた場合は、死亡一時金があります。
・税制面の優遇措置があります。
・認定農業者など意欲ある担い手には保険料の国庫補助があります。ご相談ください。
発行:伊那市農業委員会