- 発行日 :
- 自治体名 : 長野県伊那市
- 広報紙名 : 市報いな 令和7年11月号
■権兵衛(ごんべえ)トンネル開通20周年
来年2026年2月に、権兵衛トンネル開通20周年を迎えます。トンネルは1993年(平成5年)に着工して、2006年2月に供用開始となりました。境峠(さかいとうげ)断層に沿って掘られたトンネルは予想外の難工事となり、軟弱地盤のため工法を変更し、大規模出水では水抜(みずぬ)き坑(こう)を掘るなどして完成は大きく遅れました。事業にかかる総費用に対する総便益(B/C(ビーバイシー))が低いと評価され、無駄なトンネル工事と揶揄(やゆ)されたこともありました。
しかしどうでしょう。権兵衛トンネルが開通すると様相は一変しました。木曽地域と伊那地域との交通も人流も、経済圏・医療圏などが一気に広がり、無駄なトンネルどころか、両地域になくてはならない伊那木曽連絡道路となっています。
開通後、木曽谷にはコンビニが相次いで進出し、伊那の企業に勤める若者が木曽に戻り家族と一緒に暮らす。救急車はより近い伊那中央病院に向かい、買い物も娯楽も伊那地域に来るなど、なくてはならない道路となりました。
2019年(令和元年)10月、台風19号の豪雨によって、トンネルの伊那側出口付近の道路が高さ30mほど、道路の長さ5~6mにわたり崩落しました。さらに2020年(令和2年)7月には、姥神(うばがみ)トンネルを抜けた先で大規模な土砂崩落がありました。いずれも国土交通省、長野県の迅速な対応が図られ、短期間での復旧となりました。
急激な人口減少、少子高齢化、医師・看護師不足、公共交通の衰退(すいたい)などによって、全国の地方自治体はだんだんと縮小しています。木曽地域の6町村も例外ではなく、総人口は25,000人を割り始め、様々な課題が顕在化しています。こうした時代だからこそ、伊那地域との救急医療、産科、小児科などの医療連携や、国道361号を通じた高山・木曽・伊那との広域観光など、権兵衛トンネルの伊那木曽連絡道路を活用した交流がいっそう求められます。
さらに、何度となく大規模崩壊や土砂崩落を繰り返した権兵衛峠道路も、姥神トンネル先のランプ(橋台だけあるところ)から、国道19号までのトンネル化事業も決まり、ますます便利に、また安全に木曽と伊那とが結ばれることになります。
伊那市長 白鳥孝
