- 発行日 :
- 自治体名 : 長野県東御市
- 広報紙名 : 市報とうみ 2025年7月号
■あの日見た景色を、未来にも。 湯の丸高原の自然を守る人たちと紡ぐ、“次の世代”への贈り物
~ネイチャーマイスターの思い~
・小林 政明(こばやし まさあき)氏
35歳のとき、山の保全活動に熱心な友人の紹介で、高峰高原チェリーパークラインの清掃活動を始めたことをきっかけに、湯の丸高原の保全活動に携わるように。以来40年以上にわたり、湯の丸高原などの自然保護に尽力している。
令和4年には「自然公園関係功労者環境大臣表彰」を受賞。現在も湯の丸高原ビジターセンター長として、またネイチャーマイスターとして活躍している。
◇失われつつある景観
湯の丸高原で見ることができる花の種類は、40年前と大きく変わらず、約250種類の高原植物を楽しむことができます。
ただ、近年は地球温暖化の影響や野生動物による食害もあり、かつてのような花の群生は少なくなってきました。
久しぶりに湯の丸を訪れた方からは、「花が減ってしまったね」と声をかけられることもあります。
たとえばレンゲツツジは、かつて湯の丸牧場で牛や馬などが100~300頭規模で放牧されていた頃には、特に美しく咲いていました。レンゲツツジは牛にとって有害なため食べられず、その一方で、ツツジの成長を妨げるズミやミネヤナギなどの幼木は放牧された牛たちが食べてくれたため、ツツジにとって非常に良い環境が保たれていました。
しかし、時代とともに放牧頭数が減少し、環境が大きく変化したことで、現在ではカラマツやズミなどの木々が目立つようになりました。それらが日陰をつくってしまい、ツツジの成長を妨げてしまうため、以前のような景観は少しずつ失われつつあります。
◇未来の子どもたちに残したい景色
市内外の学校から子どもたちが湯の丸高原を訪れた際に、私がガイドを担当することがあります。自然の中でのびのびと過ごす子どもたちの姿を見るたびに、「もっと多くの子どもたちにこの景色や自然を体感してほしい」と強く感じます。そうした思いこそが、この場所の自然を守り続けたいという保全活動の、いちばんの原動力になっています。
◇保全活動にご協力を
現在も、私たちネイチャーマイスターや湯の丸高原レンゲツツジ保存会が中心となり、地元の関係者やボランティアの皆さんと協力して保全活動を続けています。しかし、自然の維持管理には多くの手間と時間が掛かるため、人手が十分とは言えないのが現状です。
こうした作業に参加することは、自然環境の大切さや保全の意義を学ぶ貴重な機会でもあります。美しい風景がどうやって守られているのか、その裏側を知ることができる体験は、子どもから大人まで、多くの方にとってきっと心に残るはずです。湯の丸高原の自然を次の世代につないでいくために、少しでも関心のある方は活動に参加してみませんか。
問い合わせ先:湯の丸高原ビジターセンター
【電話】62-4333