くらし 白馬村の未来を考えるフォーラム「わたしたちの白馬村と豊かな暮らしのあり方」を開催しました

白馬村第6次総合計画の策定に向けて、内科医で宇沢国際学館の代表を務める占部まり氏を講師に迎え、長野県の総合5か年プランにも取り入れられている「社会的共通資本」の考え方や、これからの地域社会に重要なことについてご講演いただきました。
その後、新田副知事と丸山村長も交えて、白馬村の現状や課題、将来に向けての取り組みについて様々な視点から対話していただきました。

◆「社会的共通資本」とは…
数理経済学者の宇沢弘文氏が提唱した考え方。豊かな社会(人々が豊かな生活を営む社会)に欠かせない要素として、(1)自然資本(大気、水、森林、土壌など)、(2)社会的インフラ(道路、交通機関、電気・水道など)、(3)制度資本(教育、医療、金融、司法、行政など)を挙げ、それらを共通財産として持続的・安定的に運用する仕組みの必要性が訴えられています。
「社会的共通資本」は、誰もが必要とする反面、利益を生み出しにくく、「お金に換算されない(できない)もの」であり、市場原理に任せて利益追求のために貪られたり、官僚的に支配されたりするのではなく、社会の共通財産として社会全体で守り維持していくことが重要と考えられています。

◆第1部 講演 「これからの地域社会〜社会的共通資本の視点から〜」
講師:占部まり氏(内科医/宇沢国際学館代表取締役/宇沢弘文氏の長女)
・「よく生きる」ためには、自然環境や社会的装置(制度)が必要。それらの社会的共通資本は、資本主義と社会主義の良いところを生かしながら、みんなで守っていくことが重要。
・本来、経済は人間の心があって初めて動き出すものであるが、現代は人間の心が経済に翻弄されている。
・「自然」や「子ども」など価格がつかないものは経済学では扱いにくく軽視されやすい。大切なものをお金に換えないこと、想像がつかない人々も守られる制度が大切。
・医療や福祉サービスは、地域にあることで住民に安心感を提供している。(経済的には測れない価値がある)
・現在の社会保障制度は約50年前につくられたもので、当時は平均寿命も短かった。現代は多くの人が80歳くらいまでは心身ともに健康。高齢者の基準を大幅に引き上げると持続可能な社会保障が実現できる。
・患者の死亡率とお見舞いに来る人数、人とのつながりと健康寿命には相関があると言われている。高度医療よりも人とのつながり(社会的処方)が大切。人とのつながりだけでなく自然とのつながりも健康と関連する重要な要素となる可能性がある。
・認知症は忘れること自体より周囲の接し方等による周辺症状が問題になることが多い。活躍できる場や役割があると症状が緩和されることがある。地域社会で受け止められる安心感があると良い。
・手仕事をしながら話をすると創造性が高まることが科学的にも示されている。白馬村にもそういった機会はたくさんあるのではないか。
・量を競うと争いが生まれるが、質を競うと幸福が生まれる。質とは美しさであり、真・善・美を大切にしたい。
・農業に従事している男性は、健康寿命が伸びることも観察されていて、医療費も少ない。農の営みは食糧生産だけでなく健康や文化など様々な価値を持っている。
・インフラや医療・教育などは一か所にまとめた方がコストが抑えられるが、地方には経済的では測れない価値があり、疎空間の美しさを次世代に残したい。
・社会的共通資本のような大切なものは、戦争や災害で失われて初めてその価値に気付くことが多い。予めそれを考えることで、失われるリスクを最小限に抑えられると良い。

※フォーラムの様子はケーブルテレビで放映しています。

◆第2部 鼎談(クロストーク) 「白馬村の豊かな未来と村民の暮らし」
◇登壇者
・占部まり氏
・新田恭士長野県副知事
・丸山村長

〔新田恭士長野県副知事〕
・長野県では、「確かな暮らしを守り、信州からゆたかな社会を創る」という基本目標を掲げ、社会的共通資本を多様な関係者と共に維持・発展させていくことを目指している。
〔占部まり氏〕
・長野県として人口減少を受け入れて対応していく方針を示していることは素晴らしい。江戸時代の日本の人口は3千万人くらいで、国内で食料を生産していた。技術を活用すれば人口が減っても今より楽しい社会を作ることもできるのではないか。
〔丸山村長〕
・全国・全世界の外的な影響を受ける分野も多い。白馬村では観光客の増加に伴い投資も活発化しているが、外部からの投資の場合は、地域にお金が落ちない構造もある中で、地価の高騰も課題となっている。
〔新田恭士長野県副知事〕
・地価の上昇については、土地の付加価値が高く収益率が高い場所という良い側面もあるが、売買を目的とした投機的な理由であれば対策を講じる必要がある。地域が賑わうと好循環の中で地価やサービスの価格が高くなっていくが、家賃なども高くなり弱者が取り残されてしまう状況も生じ得る。
〔占部まり氏〕
・真鶴町では、景観を守り育むために、まちづくり条例「美の基準」を制定している。白馬に土地を購入したり開発する人たちに白馬の自然や歴史を学んでもらい、自然や景観があってこそ事業が成り立つことを理解してもらう仕組みができると良い。
〔新田恭士長野県副知事〕
・軽井沢町でも自然と景観を守るためのガイドライン「自然保護対策要綱」があり、5つの地域区分ごとにルールを設けている。
〔丸山村長〕
・白馬村にも村民憲章や景観条例など理念やルールを示したものがいくつかあるが、それを理解してもらえていない部分もあるため、今後は周知にさらに力を入れていきたい。
・白馬村でも農の営みをされている方も多く、お裾分けなども多く行われている。一方で、区の加入率低下や外国人との言語の壁や文化の違いなど課題も多い。
〔新田恭士長野県副知事〕
・若い世代や女性から選んでもらう地域になるためにも、旧来の固定観念などを見直したり、世代間の意識の違いや文化の違いも相互に理解する必要がある。
〔丸山村長〕
・神城断層地震では地域の共助で死者を出さなかったことが白馬の奇跡と報じられた。近年は関係性が希薄化しつつある中で、どうしたら人々のつながりを継続できるか。
〔占部まり氏〕
・地域コミュニティは言語化されていないルールも多いが、相互理解とゆるいつながり、言語を介さない活動などが重要と思われる。
・これからは、足の健康、口の健康、人とのつながりが大切。多世代交流しながら楽しくフレイルチェックができると良い。
・白馬の自然や景観は、白馬の人たちのものでありながら、他の人や将来世代に与える影響も大きい。都市部の人も交えて楽しく活動しながら、自然や景観を守る意識も育んでいけるプログラムが作れるといいのではないか。
〔新田恭士長野県副知事〕
・長野県では様々な産品が生産されているが、人のつながりや信頼関係、感謝が巡ると地域内の経済循環も向上すると思われる。経済的にも社会的にも地域の絆を深めて、長野県を代表する地域になってほしい。

お問合せ:白馬村役場 総務課
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