- 発行日 :
- 自治体名 : 長野県栄村
- 広報紙名 : 広報さかえ 令和7年1月号
■希少動植物調査員からの報告(50)
新年、おめでとうございます。お陰様でこのコーナーでの報告は、50回目を迎えました。これまで地域の皆さんから寄せられた数多くの情報が、村内の自然の状況を知るための貴重な記録となりました。本紙面をお借りして感謝申し上げます。
本年度の調査でも、そうした情報により、村内の生き物の変化が見えてきました。
◆外来生物4種、相次ぎ確認!
2024年、村内で外来生物が相次いで確認されました。これらの外来生物の分布拡大は、近年の温暖化と無関係ではないようです。
その中でも2種は、「〈特定〉外来生物」です。「〈特定〉外来生物」とは、生態系や人の生命・身体、農林水産業に被害を及ぼす、またはそのおそれのある海外起源の外来種で、環境省の法律により指定された生物です。
◆アカボシゴマダラ(特定外来生物)
昨年度、村内で初確認された外来種のチョウです。役場下にある千曲川遊歩道沿いで目撃しました。
本年度になって、小滝集落のかたから写真と現物が届きました。ご自宅の小屋の中で死んでいたそうです。村内ではっきりと現物を確認したのは、これが最初です。
このチョウは、中国大陸に分布するチョウで、もともと奄美諸島に分布する在来亜種とは別種です。人為的な放チョウにより、現在関東地域から急激に分布を拡大しています。長野県でも、すでに定着した地域もあり、駆除が行われている生息地もあります。
本種の食草は、エノキという樹木です。そのため、同じくエノキを食草とする国蝶のオオムラサキを始め、ゴマダラチョウ等との競合が懸念されています。
私たちの調査では、本年度2回、村内で本種と思われるチョウの飛翔を目撃しました。今回の小滝での発見により、昨年度以上に本種が村内に入り込んでいることが明らかになってきました。
◆ガビチョウ(特定外来生物)
中国南部から東南アジア原産の鳥です。ペットとして飼われていたものが、逃げ出したり捨てられたりして繁殖したと言われています。繁殖力の強さから、西日本や関東、東北地方で急激に分布を拡大しています。県内でも分布が広がってきています。
村内では、7月に中央地区の道路脇で、衰弱した個体を偶然見つけました。前日の嵐に巻き込まれ、一時的に村内に飛来したと思われます。
◆キマダラカメムシ
このカメムシは、小滝集落の民家の玄関先にいたそうです。
調べてみると、東南アジアから南アジア原産の外来種でした。村内初記録と思われます。
江戸時代に長崎の出島で発見され、2000年以降、本州にも生息地が拡大し、10年程前から関東地方もその生息域となったようです。
サクラやウメ、ミズキ、ツツジ類など、多くの樹種に付くようです。
◆マツヘリカメムシ
本種も小滝集落で発見されました。前種同様、村内初記録と思われます。北米大陸西部が原産地で、主にマツ類の種子や新芽に害をもたらすようです。2008年に東京で見つかって以来、東北地方から九州地方まで急速に分布を拡大しています。県内でも、松くい虫の被害に加えて、本種によるマツ類への被害が懸念されています。
近隣の十日町市松之山でも、2023年秋に複数が見つかっています。
このように村内の自然は、日々変化しています。村内の様々な場所に、すでにこうした外来生物が入り込んでいる可能性があります。ぜひ情報をお寄せください。
(栄村希少動植物調査員・涌井泰二)
※今回の記事は、環境省やウィキペディア等の情報を参考にしました。