文化 〔特集〕未来につなぎたい地歌舞伎の魅力(1)
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- 発行日 :
- 自治体名 : 岐阜県恵那市
- 広報紙名 : 広報えな 2025年3月号 No.392
◆地歌舞伎とは
「歌舞伎」は、日本の伝統芸能の一つとして広く知られています。では、「地歌舞伎」とは何でしょうか。
地歌舞伎とは、プロの歌舞伎役者ではなく、地元の人たちが演じる歌舞伎のこと。江戸時代、歌舞伎役者に憧れた地方の庶民が、自ら演じて楽しむようになったのが始まりです。
江戸後期から明治初期にかけて最も盛んだったといわれ神社の祭礼で披露されるだけでなく、各地に芝居小屋が建てられ、庶民の娯楽の一つとして楽しまれました。
◆美濃地方の地歌舞伎
今、岐阜県は、全国的にも地歌舞伎が盛んな地域として知られ、30の団体が地歌舞伎の保存活動をしています。市内にも、市文化振興会に所属する保存会が8団体あり、それぞれが伝統の保存と継承に努めています。
今回は、地歌舞伎の伝統を伝える人、受け継ぐ人にスポットを当て、地歌舞伎の魅力を伝える取り組みを紹介します。
■伝える地
歌舞伎を取り巻く環境は、他の伝統芸能と同様に厳しいのが現状です。
▽高齢化や社会の変化
かつて市内各地で盛んに行われていた公演は、高齢化や担い手不足から回数が減り、各地域にある保存会の会員も減っています。特に若い世代の参加が少なく、伝統を引き継ぐことが難しくなってきています。
また、テレビやインターネットなどのエンターテインメントの多様化により、伝統芸能への関心が薄れつつあること、地域コミュニティの衰退により、文化が維持されにくくなっていることも理由に挙げられます。
▽各保存会の模索
そんな中でも、各保存会では、何とか伝統を伝えていきたいと、地域を巻き込んだ活動が行われています。
三郷歌舞伎保存会は、10年以上にもわたる空白期間を経て、令和4年、地域に向けて改めて保存会への協力を呼びかけました。その結果、会員が増え、本年3月2日(日)には地元に残る宮盛座で、自主公演を開催することとなりました。
◆宮盛座で公演を続け、伝統を伝えていきたい
三郷歌舞伎保存会副会長・堀川和宏(かずひろ)さんは、高齢化により停滞していた保存会活動を再び盛り上げたいと尽力。公演に向け準備を進めています。堀川さんの地歌舞伎への思いを聞きました。
▽一度は衰退した保存会
保存会の前身である同好会に父が入っていて、自分も3歳で舞台に立ちました。当時は人数も多く、盛んに活動していました。その後、高齢化により保存会の存続も危ぶまれましたが、昨年度、久しぶりに市の伝統芸能大会で演目を披露できました。すると会員から、やっぱり宮盛座でやりたいとの声が上がり、今回の自主公演につながりました。
▽再び宮盛座に活気を
公演に向けて家で資料を整理していると、古い写真が出てきました。写真の宮盛座は満席で、観客の声援や拍手が聞こえてくるようでした。今、こうしてまた宮盛座での公演に向けて動き出すことができ、本当にうれしいです。
▽楽しむことが原点
保存会には、中学生が2人入っています。彼女たちは、小学校の歌舞伎クラブが楽しくて続けたいと思った、と話します。自分たちが楽しみながら演じ、それを地元の人たちに見てもらうのが地歌舞伎の原点。興味を持ったら続けられる道筋ができたので、公演を続けながら、伝統を伝えていきたいと思います。