- 発行日 :
- 自治体名 : 岐阜県恵那市
- 広報紙名 : 広報えな 2025年5月号 No.394
■障がいはアイデンティティ 聴覚障がい者が生きやすい社会を
市内の介護施設で働きながら、県聴覚障害者福祉協会や市聴覚障害者福祉協会に所属する田口喜久子さん。聴覚障がいを正しく理解してもらうため、手話講座や出前講座を行ったり、市内在住の聴覚障がい者から話を聞き、県や市へ要望を出したりするなど、聴覚障がい者が生きやすい社会を目指し日々尽力している。
田口さんは飛騨市の中学校を卒業後、親元を離れ名古屋聾(ろう)学校に進学。中学生までは手話は使わず、口の動きや表情から話の内容を読み取る「口話」でコミュニケーションをとっていた。ろう学校では、同じ聴覚障がいを持つ仲間と過ごす中で自然に手話を習得し、バレーボールや音楽に打ち込みながら学校生活を過ごした。
23歳の頃、結婚と出産を機に、夫の実家がある恵那市に移住。新しい環境での初めての育児は不安が大きかったが、市内の手話サークルや同両協会に入会し、新しい仲間に支えられ、子育てや協会の活動に奮闘した。
令和2年、同協会で田口さんが取りまとめた要望が通り、「聴覚障がい者支援バンダナ」が制作され翌年には「Net(ネット)119緊急通報システム」の運用が実現。本年1月には聴覚障がい者として市内初の防災士の資格を取得した。「聴覚障がい者に向けて防災学習会を行い、命を守る知識を広めたい」と今後の展望を語る。
「言いたいことをうまく伝えられず悩んだ時期もあったが、今は自分がろう者であることを大切なアンデンティティだと捉え、自分自身を一人の人間として誇りに思っている。これからも私らしく、できることに取り組みたい」と、自らを突き動かす思いを力強く話す田口さん。
手話に興味を持つ人が増えてほしいと、今後も手話講座などを行い、聴覚障がい者と社会をつなぐ架け橋として挑戦を続けていく。
◆田口喜久子(きくこ)さん(51歳)(長島町久須見)
□プロフィル
飛騨市出身。一人旅が趣味で、昨年は北海道や熊本県などに足を運んだ。兄の影響で珍しい電車に興味を持つようになり、今年は九州のレトロな電車に乗ることが楽しみ。タレントの「紗栄子」が好きで、2年前栃木県で偶然遭遇し、手話で「ありがとう」と言ってもらえたことがうれしかったとほほ笑む。
▽デフリンピックを知っていますか?
聞こえない・聞こえにくい人のためのオリンピック。100周年を迎える記念すべき今大会が、本年11月に日本で初開催されます!大会では、スタートを音ではなく光で知らせるなど、競技ごとに工夫がされています。また、国ごとに手話が異なるため、選手らが公用語の「国際手話」を使うところも見どころです。ぜひ観戦ください!
▽田口さんの活躍はこちらから
・聴覚障がい者支援バンダナ
・Net119緊急通報システム
・市内初聴覚障がい者の防災士
※詳細は、本紙2次元コード参照