- 発行日 :
- 自治体名 : 静岡県御前崎市
- 広報紙名 : 広報おまえざき 令和7年11月号
■安心して産卵できる海岸を守るために
◇人々の暮らしによる海への影響
かつて広々としていた御前崎の砂浜は、今少しずつ姿を変えています。68年前と比べると、波の力や地形の変化などといった多くの要因により、砂浜の面積は年々せまくなっています。砂浜は、ウミガメが産卵に訪れる大切な場所です。きれいな砂浜と静かな環境が保たれることで、ウミガメは安心して産卵することができます。
もう一つの大きな問題が、海洋ごみです。風に飛ばされたビニール袋やペットボトルのキャップなどは、やがて海へ流れ着きます。ビニール袋などをクラゲと間違えて食べてしまったウミガメが、消化できずに命を落とす例もあります。こうした海洋ごみは、その約8割が陸から出たもの。人々の暮らしの影響で海の環境は傷ついているのです。
◇ウミガメの未来を守るために
市内では、行政や学校、市民団体が中心となって海岸清掃や啓発活動などの環境保全に取りは、「亀バックホーム大作戦」と称した海岸清掃が実施されています。毎年、産卵シーズン前の5月上旬に実施され、昭和45年の開校以来、55年続く伝統となっています。
ごみを出さない・持ち帰る、夜の砂浜にライトを向けないなど、小さな心がけがウミガメの未来を守ります。
御前崎で生まれたウミガメが安心して帰ってこられるように、私たちひとりひとりができる行動から始めましょう。
■私たちにできること
1.ごみを出さない・捨てない・拾う
陸でポイ捨てされたごみは、雨や風などにより川や排水路を通り、海へ流れ着きます。「出さない・捨てない・拾う」でごみのないまちを目指しましょう。
市は、「御前崎マイボトルプロジェクト」として、オリジナルボトルを製作しました。売上金の4%(80円)は御前崎の海を守る活動に募金されます。
デザイン:市内在住アーティストJiroさん
販売場所:御前崎渚の交番、道の駅風のマルシェ御前崎、観光物産会館なぶら館、海鮮なぶら市場、イタリアンジェラート・マーレ
御前崎渚の交番では、市内で開かれる海岸清掃やリサイクル活動をまとめた「御前崎市環境カレンダー」を作成。気になる活動をチェックしてみよう!
※二次元コードは本紙をご覧ください。
2.生活排水に注意する
調理ごみや油を、シンクに流さずふき取ってごみとして処分することで、海洋汚染を防ぎ、豊かな海を守ることができます。環境に配慮された洗剤の使用も効果的です。廃油は市で回収しています。
回収場所:市民課、御前崎支所
■ウミガメが安心して帰ってこられる環境を守りたい
◇楽しみながら守る 未来へつなぐ御前崎の海
NPO法人 Earth Communication 川口 眞矢代表(新谷区)
久々生(くびしょう)海岸で環境調査や生き物観察会などの啓発活動を実施し、海岸保全に取り組んでいます。9月には、国の「自然共生サイト」に認定されました。楽しみながら、子どもから大人まで一緒に、美しい御前崎の海を未来へつなげていきたいです。
問合せ:川口眞矢
【電話】090-5636-0227
◇ウミガメが来る海は御前崎の誇り
心がすっきり御前崎で夢拾い 伊村 俐香さん(大山区)
海洋ごみは拾っても拾っても毎日流れ着いてきます。果てしない作業ですが、「今拾わなければまたどこかの海岸に流れ着いてしまう。今が拾うチャンス」とポジティブに捉えています。ウミガメが来る海は御前崎の誇り。守っていくべきものだと思います。
活動日時:
奇数月第2日曜8:30~9:00…下岬海岸
偶数月第3火曜8:30~9:00…灯台下海岸またはマリンパーク御前崎
問合せ:伊村俐香
【電話】090-7614-3165
◇ごみ拾いをきっかけにまちのことを考えてみてほしい
OMAEZAKI BEACH CLEANUP 中山 琴乃さん(中町)
毎日一人でごみ拾いをしている人たちを見て、私にできることを考えた結果、海岸清掃グループを立ち上げました。みんなと月1回ならできるかも、その思いからでした。ごみ拾いをきっかけにウミガメや地域、環境問題などに目を向けてほしいです。
活動日時:不定期(毎月1回)
※ホームページをご確認ください。
問合せ:中山琴乃
【電話】080-9119-2377
◇ウミガメのために何ができるのか考える必要がある
私生活では、本年度から監視員として従事 御前崎渚の交番 増田 洋樹さん(中原区)
水上オートバイでのパトロールの際には、水面に浮いているごみを拾うなど、海を守る活動に取り組んでいます。本年度からは監視員となり、ウミガメと住民との強いつながりを改めて感じました。ひとりひとりがウミガメを守るために何ができるか考える必要があると思います。
営業日:9時~18時 ※水曜定休
問合せ:御前崎渚の交番
【電話】0548-23-9927
■ウミガメの保護を通じて御前崎で育まれてきた「命を大切にする文化」
◇地域に受け継がれてきた思い
監視員の見守りや児童の飼育活動、住民の清掃・啓発など、ウミガメを守るための活動は、今も止まることなく続いています。牧野さんが話したように、「ウミガメを守りたい」という思いと活動の輪は、大人から子どもへ、子どもからそのまた子どもへと受け継がれてきました。
海岸の形が変わっても、ウミガメの数が減っても、この思いと活動の輪は受け継がれていきます。御前崎では、長い年月をかけて「命を大切にする文化」が育まれてきたのです。ウミガメと人とが共に生きる風景は、御前崎が誇るべきもののひとつです。
私たちの行動は、人間社会だけでなく、自然環境などにも大きな影響を与えます。文化や環境問題に目を向けるときっと新たな気づきがあるはずです。そして、行動し、互いの調和につなげていくことが大切です。
人々の手で守られ、心に受け継がれてきたこの文化を次の世代へ。ウミガメが御前崎の海に帰ってこられるように。これからも、ウミガメと御前崎との歩みは続いていきます―。
〔特集〕ウミガメと共に生きる―地域でつなぐ命― 終
