文化 文化財通信 その237

■明治日本の産業革命遺産~鹿児島~
8県11市にまたがる8エリア23資産からなる「明治日本の産業革命遺産製鉄・製鋼、造船、石炭産業」から、エリア2「鹿児島」を紹介します。
鹿児島県鹿児島市には、23資産のうち、3つの資産が所在しています。「旧集成館」「寺山炭窯跡」「関吉の疎水溝(そすいこう)」です。いずれも、産業分野としては「製鉄・製鋼」と「造船」に、時期としては1850年代の「試行錯誤の挑戦」から、明治維新を経た「西洋の科学技術の導入」に該当します。
西洋技術の導入に情熱を注いだ第11代薩摩藩主島津斉彬は、島津家の別邸であった「仙巌園(せんがんえん)」に隣接する形で、製鉄・造船・紡績・ガラス製造など、複数の事業を推進する「集成館」という日本初の工場群を設置しました。集成館には鉄製砲鋳造のため反射炉が築かれ、現在もその基礎部分が保存されています。
集成館事業で利用する燃料を確保するため、薩摩藩は藩内各地に木炭を生産するための炭窯を作りました。「寺山炭窯跡」はそのうちのひとつで、火力の高い「白炭」を生産した石積の炭窯です。
一方、集成館事業に必要な動力は、水力によって賄われていました。韮山反射炉でも、鋳造した鉄製大砲の中をくり抜くため、隣接する韮山古川から水を引き、水車を回していたように、当時の工場システムにとって、水利は必要不可欠な要素でした。
集成館の場合、近隣に適当な河川がなかったため、元々仙巌園に給水するために作られた全長約7kmの関吉の疎水(水路)から、集成館につながる水路を新たに築き、水利を確保しました。
このように、エリア2鹿児島の資産は、西洋の技術をいち早く取り入れ、国産化しようとした「集成館」と、それを燃料と動力によって支えた「寺山炭窯跡」「関吉の疎水溝」からなる、当時最先端の工場群だったのです。

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