- 発行日 :
- 自治体名 : 静岡県河津町
- 広報紙名 : 広報かわづ 令和7年11月号
■満月のパワーを秘めた塩
現在も町内で塩づくりを続ける土屋宗一郎さん。土屋さんの塩づくりにかける思いや原動力について伺いました。
土屋 宗一郎(そういちろう)さん=浜=
82歳を迎えた現在も現役で塩づくりに励む。健康の秘訣は良い塩を摂ること。
◇塩づくりを始める
元々木工所として木材を扱い、ログハウスなどを作る職人だった土屋宗一郎さんは、その際に出る大量の廃材の処分に困っていたところ、知り合いの農家から塩作りの話を聞き、廃材の処分を兼ね、有効利用しようと独学で塩作りを始めたそうです。
自分の理想とする塩を求めて約10年の研鑽を経て完成した現在の塩は自分でも納得の行く最高傑作だそうで、反響も大きいそうです。
◇こだわりの詰まった塩
(1)満月に汲み上げる海水
土屋さんは、月の満ち欠けは生き物や潮の満ち引きに関係していると考えて海水に含まれるミネラルが最も引き出された状態になるのが満月の夜であると話します。
(2)手作りの三段釜
試行錯誤の末に辿り着いた製塩釜は三段にすることにより最終段までに沈殿する不純物を取り除く役目などがあるそうです。
(3)火加減
大きな廃材を利用し豪快に火を焚きますが、高温になり過ぎないよう注意しつつじっくりと炊き上げます。手間暇をかけて作る製法が土屋さんが理想とする粒の大きなザラっとした塩に仕上げるための大事なポイントです。
■塩を作って20年。30年、40年を目指して
◇研究を重ねて生まれた塩
工房を見学した時にひときわ目を引かれた土屋さんご自慢の三段釜。塩を作るために必要不可欠なこの釜も土屋さんが自ら研究し、開発したそうです。
土屋さんの製法は温泉熱よりも高い温度で加熱することができ、釜が三段になっているので火に近いほどより高い温度で加熱されます。しかし鋼やステンレスなど金属類は過度な熱に弱く、材質が変わったり溶接した所などが割れてしまうことがあります。実際に最も火に近い1番下の釜は熱の影響で溶接した所から何度も割れてしまったことがありました。ひどい時には割れた箇所から海水が漏れていて次の日の朝、釜が空っぽになっていたことがあったそうです。割れる度に知り合いの鉄工屋さんに何度も補修してもらったり、新しく作ってもらったりしています。
海水を煮詰めるため、当然普通の鋼では錆びてしまいます。錆びに強い釜を作るために、材質の選択にもこだわりました。前回新しくした時には西伊豆の方でメッキの釜を使用していて問題無く塩が作れているとの鉄工屋さんの案で、鋼材で作った釜に亜鉛メッキ処理したものを採用し、現在も釜の調子は良好とのことです。
土屋さんは昔から何でも作ることが出来たので釜の周りを固めているレンガ積みやコンクリートも自分で作り上げてしまいます。より良い塩を作るために今もなお研究を重ね、塩と向き合っています。
