文化 未来を創る場所『瀬戸市新世紀工芸館』

瀬戸市新世紀工芸館。
研修生たちは、陶芸・ガラスそれぞれの専門領域で、2年間の研修を通して繊細な手作業、試行錯誤を繰り返し作品制作に没頭します。
今回の特集では、全国から集まった3人の研修生の声を通して、彼らの創作に込められた想いと、工芸という表現の魅力を伝えます。

■鳥山翔太(とりやましょうた)さん
《僕の世界観の中で、一緒にワクワクしながら過ごせたら》
埼玉県出身。大学卒業後、プロダクトデザイナーとして活躍するなか、伝統工芸に接する機会があり「永く使えるモノ」に関わりたいと強く思うように。その後、粘土という小さな時から親しみもあり、自身の手で作品を生み出す陶芸の世界へ。瀬戸工科高校専攻科を経て土、ガラス両方できる新世紀工芸館研修生として研修中。

▽作風
何層にも重ねて練り上げた土が生み出す地層のような表情や、陶芸特有のひび割れやねじれといった偶然の美しさを大切にしながら、恐竜をモチーフに作品を制作しています。土も化石も、どちらも大地の中で長い時間をかけて生まれるものです。このことに、大きなロマンを感じています。土は指先の感覚を繊細にくみとり、カタチにできます。そして1度焼いてしまうと、半永久的に風化しない物質になります。瞬間をカタチに閉じ込められるのに、永遠に残るモノになるという点に魅力を感じます。
小さな時からレゴなどで自分の世界をつくる、いわゆる箱庭遊びが好きでした。独自の世界観をもった、ストーリー性のあるモノづくりを大事にしています。

▽将来の展望
ここは陶芸、ガラスの両作家がすごく近い距離に感じます。修了生も利用できるなど、人のつながりが強いからこそ作家として成長できます。
将来的には陶芸というジャンルを超えて活躍したいですね。

■藤井眸(ふじいひとみ)さん
《無作為と作為、自然をインスピレーションに》
兵庫県出身。大学卒業後、銀行に就職したが好きなことに携わりたいという思いからインテリアコーディネーターの資格を取り、空間デザイン、スタイリングの世界へ転身。アンティークや作家の作品を取り扱うなかで人の手で丁寧に生み出され、いまも大切に使われているものに愛着を感じ自身の手でも何か生み出したいという気持ちが芽生える。ガラス作家との出会いからガラスの道へ。
富山ガラス造形研究所を経て、環境が整っていて自然を感じることもできる新世紀工芸館の研修生に。

▽作風
一瞬も同じときはない。全てをコントロールすることが難しいガラスの無作為な部分と作為的な部分を合わせ持つところに美しさを感じます。雪、氷など自然からのインスピレーションと感覚を大切にし、制作しています。

▽将来の展望
もっともっとやることやりたいことはありますが、将来的には海外での展示ができればと思います。自分の代表作といわれるようなものや、作風の確立が一番ですけどね。

■髙見花実(たかみかさね)さん
《自分を証明するもの、証明してくれるものを表現したい》
北海道出身。小学生の時のガラス体験からガラスに興味を持つように。
コロナを契機に進路を考えた時、小学生の時の卒業文集に「ガラス職人になりたい」と書いてあったことを見つけ、ガラスの道へ。富山ガラス造形研究所を経てガラスの環境が整っていて、人とのつながりのある新世紀工芸館に惹かれ研修生に。

▽作風
私はガラスとエナメル絵付け技法を用いて地元である北海道の広大な自然と自身の経験をテーマに制作しています。しかし、いざ作品が完成するとどこかで他人行儀で繕っているものになってしまいます。その自分と作品の間をエナメルがつなげてくれるのではと考え、富山のころから日々研究しています。自分をテーマにしている作品の場合、共感できるかがとても重要です。言葉で伝えるべきかどうか取捨選択することは難しいですが、鑑賞者の想像する余地を残すことも大切にしていきたいです。

▽将来の展望
どこに行ったとしても表現することは続けていきたいと考えています。作品を出し続けることで自分が存在している証となるのではと思います。

問合せ:
新世紀工芸館【電話】97-1001
秘書広報課(市役所4階)【電話】88-2530