- 発行日 :
- 自治体名 : 愛知県小牧市
- 広報紙名 : 広報こまき 令和7年9月号
■がんリハビリとパフォーマンスステータス(PS)
リハビリテーション科 部長医師:室 秀紀
▽がん治療と運動器診療
がんと共存する時代となり、2010年にがん患者さんへのリハビリテーションが保険で認められるようになりました。がん患者さんが生活を続け、社会に参加するためには、移動機能がきわめて重要で、適切な運動器管理が不可欠です。日本整形外科学会は2018年度より「がん自体あるいはがんの治療によって運動器の障害が起きて移動機能が低下した状態」を「がんとロコモティブシンドローム(がんロコモ)」とし、(1)骨転移など「がんによる運動器の問題」、(2)長期臥床による筋力低下などの「がんの治療による運動器の問題」、(3)もともと存在する「がんと併存する運動器疾患の問題」の3つの状態に分け、実態を解明し運動器診療に何ができるのかを考えることが重要であると考えられるようになりました。
がん患者さんにリハビリを行う意味は何か。それはがんロコモで動けなくなることによりがんの治療を受けられなくなる可能性があるということです。
▽パフォーマンスステータスによる運動器管理
一般にがん患者さんの全身状態の指標に、パフォーマンスステータス(PS)という評価方法が使われます。日常生活動作制限の程度を0~4のスコアで示すもので、化学療法などのがん治療の適応を決定する重要な要素であり、通常3以下であればがん治療の積極的な対象にはなりません。
最期まで自立した自分自身の生活を送れること、就労を維持すること、がん治療を継続すること、これらには「動ける」ことがとても大切で、がんと診断されたときから運動器のマネージメントを継続し、長く動ける状態を維持していくことがとても重要です。
▽がんリハビリの重要性
がんのリハビリテーション医療は、診断された直後から始める「予防的リハビリテーション」、治療と並行して受ける「回復的リハビリテーション」、再発/転移の時期には「維持的リハビリテーション」、症状緩和を中心とした医療が行われるときには「緩和的リハビリテーション」と、がんの治療の時期に応じて、リハビリテーション医療の目的や役割が異なります。
最後に、以前はがん患者さんにリハビリを行うなんて考えられないと思われていましたが、日本では2人に1人はがんを患うといわれるようになった現在、がん患者さんこそ早期からリハビリを積極的に行い、少しでも長く生活の質を保つことが生活の幅や治療の幅を広げることになります。がんと診断されたら常に運動のことを考えながら生活していきましょう。
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