くらし とよあけ花マルシェコラム

「♪丘の上〜ひなげしの花で〜占うの〜あの人の心〜今日も〜一人〜♬」は昭和48年に大ヒットした歌謡曲。「懐かしい!アグネス・チャンだね?」「この歌は今でも台所で洗い物してる時に自然と鼻歌で歌ってたりしま〜す!」と、昭和40年以前生まれの人なら誰もが知ってるこの曲『ひなげしの花』ですが、今月も下旬頃からヒナゲシの花が咲き始めることでしょう。今回はそのヒナゲシについてお話させていただきます。
ヒナゲシは、ヨーロッパ原産のケシ科ケシ属に分類されるものの一種です。「ケシ?ケシは栽培禁止の植物でしょう?」そうですね。一般にケシといえばケシ属にあるアヘンの元となる種(Papaver somniferum)を指すようですが、ヒナゲシは同じケシ属でも、アヘンとは無関係で普通に栽培できるので安心してください。ただし、あくまでも観賞用植物であって、食用にはできないものなので、決して口に入れてはいけません。
ヒナゲシは、正保(しょうほう)2年刊の『毛吹草(けふきぐさ)』巻二の五月に「美人草(びじんそう)」という名称で登場し、同巻五の夏において俳句にも詠まれていることから、江戸時代初期までには日本に伝わって来たと考えられます。この他にもいろいろと別名があるようですが、良く知られているのはグビジンソウの名称でしょう。「それ、項羽(こうう)の妻の虞美人(ぐびじん)のことだよね?何でも虞美人の墓にヒナゲシの花が咲いたことから虞美人草(ぐびじんそう)の名がついたとか?」「え?項羽って秦の始皇帝の頃の人でしょう、紀元前にはもうヨーロッパから中国にヒナゲシが渡って来てたってこと?」おおっと、すごいツッコミですね!この話は伝説であり、ヒナゲシの伝播(でんぱ)を裏付けるにはちょっと無理がありそうですね。中国において虞美人(ユーメイレン)は武人の妻の象徴として、その人気はご主人の項羽を凌ぎ、楊貴妃(ようきひ)(ヤングイフェイ)とも並び称されるほどです。また、ヒナゲシの中国名は〝虞美人〞そのもの(虞美人草の〝草〞の字がない)です。「何かヒナゲシって、中国では凄くレベル高くない?」ふふ、本当ですね〜。ヒナゲシの花が紙のように薄く風になびきながらも凛(りん)と立つ姿が、美しく華奢(きゃしゃ)でも強い意志で貞操(ていそう)をまもった虞美人に似てるんでしょうかね〜?
そんなヒナゲシですが、実はとても丈夫で、一度花が着くと、周りの草をかき分けながら、夏まで咲き続けます。お近くのヒナゲシ畑を探しておいて、春の花が一段落する頃になったら見に行きましょう〜!

執筆/愛知豊明花き流通協同組合 理事長 永田 晶彦

※写真は広報紙34ページをご覧ください。