文化 〔連載コーナー〕歴史探訪クラブ其の248

■江比間ゆかりの俳人たちの碑が集う
江比間町住吉神社の西側、国道から南に少し入った小高い所に江比間句碑公園があります。ここにある数基の句碑は、かつて海岸沿いにあった盛義海水亭(もりよしかいすいてい)前の道路わきの斜面から移転されたものです。その後、有志により新たな句碑がいくつか建立され、現在の句碑公園として整備されました。
この公園の一番高い所には、独特の風格をもった自筆文字で次のように刻まれた句碑があります。
「夕凪(ゆうなぎ)や 浜蜻蛉(はまかげろう)に つつまれて」
これは、江比間地域における俳句活動の発展に大きく貢献した臼田亜浪(あろう)の句碑です。
亜浪は大正4(1915)年に「石楠(しゃくなげ)」を創刊し、その主宰となり「一句一章論(いっくいっしょうろん)」を唱え全国各地の俳句指導に努めた人物です。
句碑に刻まれている歌は、大正14年の夏に、太田鴻村(こうそん)を伴って盛義海水亭(大正12年開業)を訪れ詠まれたもので、昭和2(1927)年に全国の亜浪句碑の第1号として建立除幕されました。亜浪は同年自らの銀婚記念として泉小学校の校歌を書いて送りました。その後も幾度か盛義海水亭を訪れ、ここで家族と一緒に過ごしたり、この地の俳人たちを指導しました。
今回紹介した句碑公園は、江比間集落を眼下に三河湾に浮かぶ島々を望むことができる景勝地にあります。また、松尾芭蕉や太田鴻村、市川丁子(ていし)などの俳句の著名人の句碑もある隠れた名所となっています。皆さんも一度訪れてみてはいかがでしょうか。
(学芸員 天野敏規)

現在、盛義海水亭に残された俳人たちの俳句などをまとめた報告書を作成中です。完成後は図書館などでご覧いただくことができます。

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