- 発行日 :
- 自治体名 : 愛知県田原市
- 広報紙名 : 広報たはら 令和7年5月号
宮川春汀(しゅんてい)・斎藤専吉(せんきち)の功績を見直す
福江町出身の宮川春汀(しゅんてい)(1873~1914)は明治時代終わりに活躍した挿絵画家、斎藤専せんきち吉(1876~1962)は地元の文化発展に寄与した人としてこれまで紹介されてきました。しかしこの二人の功績はそれのみではありません。
売れっ子となった春汀は東京で多くの文化人たちと交友を深め、集うたびに故郷の伊良湖をはじめとした渥美半島のすばらしさを語りました。明治31(1898)年にはその影響を受けた柳田国男や太田玉茗(ぎょくめい)、田山花袋(かたい)が相次いで伊良湖を訪れました。島崎藤村は、柳田国男が伊良湖で体験したエピソードからヒントを得て『椰子の実』詞を作りました。もはや、春汀なくしてこの名曲は誕生しなかったことでしょう。
斎藤専吉はこの文化人の地元での受け入れ窓口となり、その大らかな人柄で半島の歴史・文化や自然を伝えました。
春汀は東京で、専吉は地元で、影響力のある人たちにその良さを伝え、彼らの発信力のおかげで伊良湖はあこがれの観光地となっていきます。私は二人の絶妙な連携によって、魅力ある渥美半島の観光の礎を築いた功績を評価したいと思います。この二人の人脈の使い方、故郷愛に満ちた「口コミ」は今後の渥美半島の観光振興のヒントになるかもしれません。
歴史探訪クラブHPの「郷土の人物」ページにバックナンバー「112.渥美半島の誇るべき芸術家宮川春汀」、「94.渥美半島の文化を支えた斎藤専吉」で紹介しています。
(学芸員 増山禎之)
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